ティーンムービーは全滅、ジャニーズ離れも進行中? 独り勝ち東宝のラインナップから2021年を占う

東宝のラインナップから2021年を占う

 先週末の動員ランキングは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が土日2日間で動員65万5000人、興収9億3900万円をあげて9週連続で1位に。コミック最終巻発売をめぐる連日の報道、先週末から配布が始まった入場者特典「来場御礼スペシャルブック」などの効果もあって、9週目にして興収の前週比が143%というとんでもない数字に。今週に入ってからも「歴代1位の『千と千尋の神隠し』をいつ超えるか?」みたいな報道が散々されているが、2カ月前から超えるのがわかりきってる話のどこにニュースバリューがあるのかさっぱりわからない。NHKを含むテレビ局各局によるこうした無料の作品宣伝は、年末年始の音楽番組やバラエティ番組を通してこのまま延々とおこなわれていくわけだ。東宝やアニプレックスにとってはまさに濡れ手で粟といったところだろう。

 さて、先週の木曜日、アメリカではディズニーがインベスター・デー(投資家向けの記者発表)を開催して今後数年のラインナップを発表。その豪華すぎるコンテンツの大半が「映画」ではなくディズニープラスの「配信作品」であること、日本でも来年中にはディズニープラスの上位互換サービスである「Star」がローンチされること、などが大きな話題となったわけだが、それについては追って触れるとして、今回は昨日発表があったばかりの東宝の2021年のラインナップについて取り上げたい。ちなみに2020年度の年間興収トップ10(2019年12月公開作品〜2020年11月公開作品)のうち7作が日本映画。7作中、松竹の『事故物件 恐い間取り』(年間8位)を除いた6作が東宝作品。他の国内メジャーの不甲斐なさ、何よりも企画力の低下もあって、興収的な観点では「日本映画とは東宝映画」というところまで事態は進行している。

 年内に『約束のネバーランド』、『劇場版ポケットモンスター ココ』、『映画 えんとつ町のプペル』の公開が控えている東宝の2021年は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(東映、カラーと共同配給)から始まる。その後、コミック原作作品は『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』、『ブレイブ -群青戦記-』、『名探偵コナン 緋色の弾丸』、『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE3(仮題)』の5作。テレビドラマの映画化作品は『奥様は、取り扱い注意』、『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』、『劇場版「きのう何食べた?」』の3作。小説原作作品は『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』(アニプレックスと共同配給)、『燃えよ剣』(アスミック・エースと共同配給)、『鹿の王』の3作。「東宝グローバルプロジェクト」と銘打たれたハリウッドメジャーと組んだ作品が『映画 モンスターハンター』(東和ピクチャーズと共同配給)、『GODZILLA VS. KONG(原題)』の2作。それ以外の作品にもシリーズ作品(『マスカレード・ナイト』、KADOKAWAと共同配給する『妖怪大戦争 ガーディアンズ』)はあるものの、実写では『キャラクター』、アニメでは『竜とそばかすの姫』と完全オリジナルの目玉作品があり、『シン・ウルトラマン』のようにフタを開けるまで何が出てくるのかわからない期待作もあり、例年と比べてかなり攻めたラインナップという印象を持った。

 驚いたのは、2010年代の実写日本映画を興業的に支えてきた、少女コミックやライトノベルを原作とするティーンムービーが一つも見当たらないこと。一方で、これまで東宝のティーンムービーを支えてきた三木孝浩監督は、『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』でSF小説界の巨人ロバート・A・ハインライン原作の映画化という難題に挑んでいる。同作は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』で歴史的成功を収めた「アニプレックスとの共同配給」という座組を、実写作品でおこなう点でも注目だ。また、配信の際に権利関係の縛りが多いジャニーズのタレントの主演作も、今年から来年に公開延期となった『燃えよ剣』以外では『マスカレード・ナイト』の1作だけだ。

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