瀕死の映画界に下った「最後の審判」? ワーナー&HBO Max大騒動の裏側

ワーナー&HBO Max大騒動の裏側

 先週末の動員ランキングは、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が土日2日間で動員46万6000人、興収6億5600万円をあげて8週連続で1位。累計では動員2152万人、興収288億円を突破。昨日12月9日に発表された東宝の「2020年11月映画営業部門 興行成績速報」によると、2020年11月の東宝の興行収入は154億2375万円。もちろんその大半は『鬼滅の刃』が稼いだわけだが、前年同月比はなんと1063.3%。『鬼滅の刃』公開月だった10月の前年同月比443%に続いて、途轍もない数字を叩き出したことになる。それでも11月までの通年ではまだ前年比80%なわけだから、コロナ禍のピーク期(まあ、本当のピーク期は今なのだが)だった3月から6月がいかに大変なことになっていたかという話でもあるのだが。

 さて、そんな日本で独り勝ちどころか、世界の映画興行においても圧倒的な独り勝ちとなっている東宝の状況とは対照的に、海の向こうのアメリカの興行界では「最後の審判」とでも呼ぶべき大きな出来事が起こった。12月3日、アメリカのワーナー・ブラザースは2021年に劇場公開するすべての作品を、自社のストリーミングサービスであるHBO Maxで公開同日に配信することを発表したのだ。

 2021年の劇場公開予定作品には、小栗旬も出演しているモンスターバースの最新作『Godzilla vs. Kong(原題)』、ジェームズ・ワン製作によってリブートされる人気ゲームの映画化作品『Mortal Kombat(原題)』、『クレイジー・リッチ!』を大ヒットさせたジョン・M・チュウ監督の新作『In the Heights(原題)』、マイケル・ジョーダンからレブロン・ジェームズに引き継がれて25年ぶりに映画化される『Space Jam: A New Legacy(原題)』、ジェームズ・ガン監督&マーゴット・ロビー主演で心機一転を図る『The Suicide Squad(原題)』、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督&ティモシー・シャラメ主演によるSF古典の再映画化『Dune/デューン 砂の惑星』、伝説の大人気テレビシリーズ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』のスピンオフ映画『The Many Saints of Newark(原題)』、『マトリックス』シリーズ18年ぶりの続編『Matrix 4(原題)』などが含まれる。これらの作品は、先に発表されていた12月25日北米劇場公開、同日配信の『ワンダーウーマン 1984』と同様、北米ではHBO Max配信後1カ月間、追加料金なしの通常契約で視聴可能となる予定だ。

 「どうして1カ月だけなのか?」という点についてそのからくりを解説しておくと、目当ての作品を視聴するために短期間だけHBO Maxと契約して、見るだけ見たら解約するということを防ぐため。ワーナーとしては、毎月のように話題作の映画を配信し、一方で前月の話題作は見られなくなるという、話題作の数珠つなぎによって視聴者のHBO Maxの契約をずっと継続させておきたいからだ。さらに言うなら、今回の決断の背景には、昨年11月に北米で大々的にローンチしたHBO Maxが、先行するNetflixやAmazonプライムに対してはもちろんのこと、同時期にローンチされたディズニープラスに対しても契約者数で大きな遅れをとっていたことがあった。

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