『恋する母たち』息子たちの成長が清涼剤に 恋に翻弄され続ける木村佳乃、吉田羊、仲里依紗
頑なになっていく優子、自分を解き放ち始める大介
そして優子(吉田羊)は、家族と離れ、赤坂(磯村勇斗)とも別れ、単身・千葉で仕事に没頭する日々を送っていた。新参者の優子に対してつれない態度を取る顧客たち。「土下座をしろ」と言われても、「朝早く来い」と言われても、顔色ひとつ変えることなく食らいつく。まるで家族を傷つけた罪を悔い改めているかのように。だが、それでも1人になって思い出すのは赤坂のことだった。
仕事に没頭すれば、物理的な距離を取れば、自然と忘れることができるのではないか。そう思っていたが、くたくたに疲れて帰ってきた夜に赤坂からの着信が入る。画面を見てこのまま無視するか躊躇しながらも、結局は「話すことはない」と言いながら出てしまうのが優子らしいところだ。突き放しながらも、結局は追いかけてくる赤坂を完全に振り切ることができない。その隙こそが、シゲオの言う優子のメスとしての本能なのだろう。
そろそろ弱ってきているのではないかというタイミングで電話をかけ、努めて仕事仲間としてエールを送る赤坂のいじらしさも胸を掴まれる。赤坂も引っ越して、他の女性との時間を作れば、優子を忘れようとすればするほど、その思いが募る。忘れたいと思うほど、忘れられないのが恋心だからだ。心の奥にしまい込むほどに膨れ上がっていく。ならば、いっそそれを受け入れてしまったほうが穏やかになれる。それは、電話で研に「好きだよ」と話せるようになった大介を見ていて思うこと。シゲオと共に与論島に渡った大介は、自分自身のことを受け入れ、実に晴れやかな表情になっていた。小説の執筆が進まないシゲオに「僕のことを書きなよ」と言うほど。苦しんできた日々を、解き放ち新しい未来へとつなげようとしているのだ。
母たちの執着と、息子たちの前進――。この大人たちのめんどくさい恋物語に、3人の息子たちの存在が一服の清涼剤となってくれる。多くのものを抱え、身動きがどんどん取れなくなっていく母たちが、柔軟に軽やかに歩んでいく息子たちの姿がどう影響するのか。母と子が、共に成長していく様子にも注目だ。
■放送情報
金曜ドラマ『恋する母たち』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:木村佳乃、吉田羊、仲里依紗、小泉孝太郎、磯村勇斗、森田望智、瀧内公美、奥平大兼、宮世琉弥、藤原大祐、渋川清彦、玉置玲央、矢作兼、夏樹陽子、 阿部サダヲ
原作:柴門ふみ『恋する母たち』(小学館 ビックコミックス刊)
脚本:大石静
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
演出:福田亮介
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS