染谷将太が渾身の唸り声で胸中を表現 『麒麟がくる』織田信長の無念

『麒麟がくる』染谷将太が渾身の唸り声

 この撤退戦を任されたのは光秀である。すると藤吉郎が自分も本軍を守るしんがりに入れてくれと訴えてきた。虫を掴み、「羽があるのに飛ぶことを知らない」と比喩を交えながら自分の身の上話をする藤吉郎。いかに苦しい中を生き抜き、千人の足軽を預かる身にまで成り上がったのかが語られる。さらに「わしにも羽はある、わしは飛ばぬ虫で終わりたくわない」と土下座し、しんがりに入れてくれと懇願した。額に土をつけて鼻水を垂らしながら「藤吉郎、本望である」と発する佐々木蔵之介の芝居もまた心を掴み激しく揺さぶる力がある。信長を取り巻く環境に隠れていた様々なドラマが、役者陣の力強い表現によってより輝きを帯びて表された。そして光秀と藤吉郎は二手に分かれると、退却する織田本隊の最後尾を陣取り、襲撃してくる浅井・朝倉軍を討ち払うのである。

 ついに明智光秀と木下藤吉郎が頭角を現す。2人は信長を守るため、立派に働きを残した。特に光秀は幕臣でありながら信長の事実上の家臣として、信長の良き助言者となり戦についても進言、ときには信長を慰め励ました。また、ここにきて藤吉郎との距離も一気に縮まる。さらに今回、戦国時代に終止符を打つことになる徳川家康の口から、戦のない世を願う言葉が聞かれたことも大変感慨深いことである。今後、それぞれの関係性がどう変化していくのかに注目したい。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00〜放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00〜放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin

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