柿澤勇人、挑戦し続ける役者道 『エール』山藤太郎として「長崎の鐘」を歌唱

柿澤勇人、挑戦し続ける役者道 『エール』山藤太郎として「長崎の鐘」を歌唱

 いわゆる優等生やプリンスタイプではなく、ちょっとやんちゃなところはあるが、とにかく周囲の人間に愛される気質を備えている。わかりやすくそれを表には出さないが、じつはとても真面目で純粋な人だとも感じる。いつの間にか他者の心をスっと掴む不思議な魅力を持ったプレイヤーだ。

 インタビューで特に印象的だったのが、故・蜷川幸雄の演出作品『海辺のカフカ』に出演した時のエピソード。当時、俳優としてふたたび活動するようになった柿澤が、初の蜷川作品参加で、けちょんけちょんにしごかれ、2年後の再演時に初演と同じ役でキャスティングされた際「もし、これでまた蜷川さんに認めてもらえなかったら、もう役者はやめよう」と心に決めて稽古場に行くと、蜷川から「お前、上手くなったな」とほめられて、この仕事を続けていこうと前を向けたという話。それから柿澤は蜷川の厳しいダメ出しにも時に軽口で言い返せるようになったそうだ。

 ちなみに、彼の祖父と曾祖父は伝統芸能の世界の人間国宝。といっても、俳優になりたいと家族に話した時にバックアップがあったわけではなく、むしろ祖父には「そんなに甘い世界ではない」と強く止められたという。

 『エール』にはミュージカルの舞台で活躍する俳優が多数出演している。柿澤も『デスノート The Musical』の夜神月、『メリー・ポピンズ』のバート、『フランケンシュタイン』のタイトルロールなど、日本初演のミュージカルで大役を担い高い評価を得ている。という前置きがありつつ、柿澤自身は“ミュージカル俳優”とカテゴライズされることにちょっとした居心地の悪さを感じているようにも思う。事務所の先輩でもある吉田鋼太郎を師と仰ぎ、ストレートプレイへの強い想いを持ってシェイクスピアや三谷幸喜作品などさまざまな作品にトライし続ける彼にしっくりくるのは“役者”という表現だ。

 そんな柿澤勇人が演じる昭和の国民的大スター・山藤太郎(=藤山一郎)。裕一がさまざまな祈りを込めて作曲した「長崎の鐘」を歌う歌手という重要な役どころである。かつてコロンブスレコードで挨拶を交わした裕一に「生活のために歌っているんですよ」とサラりと言ってのけた青年が、戦争体験を経て、人々の希望となるこの曲とどう向き合うのか物語の行方とともに注目したい。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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