石丸幹二はなぜドラマの世界でも重用されるのか 『相棒season19』初回ゲストとして高まる期待
“バディもの”と聞いてあなたはどんなドラマを思い浮かべるだろう。星野源と綾野剛の『MIU404』(TBS系)? 中島健人と平野紫耀の『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)? それとも反町隆史と竹野内豊の『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)? いやいや、基本はやっぱりアレで決まり。今期で20周年イヤーを迎える『相棒』(テレビ朝日系)だ。
2000年に土曜ワイド劇場の枠で放送を開始し、2002年より連続ドラマとしてシリーズ化された『相棒』。水谷豊演じる杉下右京と彼の“相棒”が警視庁特命係としてさまざまな事件を解決する本作は「ボーダーライン」「BIRTHDAY」「待ちぼうけ」など多くの名作を世に送り出してきた。
その『相棒』のseason19がいよいよスタートする。初回「プレゼンス」は1時間24分の拡大版として放送されるのだが、メインゲストとして重要な役割を担うのが石丸幹二だ。
「プレゼンス」で石丸が演じるのは謎多きIT長者の加西周明。白バイ警官の銃撃事件を追う特命係の右京と冠城(反町隆史)は、捜査を進めるうちに“ネオ・ジパング”と呼ばれる謎の仮想国家の存在を掴む。加西は“建国の父”として“ネオ・ジパング”に君臨している圧倒的権力者らしいのだがーー。
石丸幹二といえばミュージカル界の貴公子。東京藝術大学在学中に劇団四季の『オペラ座の怪人』ラウル・シャニュイ子爵役で舞台デビュー。以後正式に四季に入団し、17年間同劇団に在籍する。
四季時代は『ウェストサイド物語』『美女と野獣』『壁抜け男』など、数多くのミュージカルで主演を務めた石丸だが、入団時は当時の劇団代表で演出家の浅利慶太氏に姿勢の悪さを指摘され、背中に1mの定規を入れて稽古に参加していたこともあるそうだ。
ミュージカル俳優としての彼の魅力。もちろん、歌が素晴らしいとか佇まいが美しいとかさまざまなファクターが挙げられるのだが、なにより推したいのが「相手役を輝かせ美しく魅せる」力。特に『オペラ座の怪人』ラウル子爵や『美女と野獣』の野獣役では自身のノーブルな雰囲気を活かしつつ、クリスティーヌやベルといった相手役の魅力を引き出し際立たせる芝居が印象的だった。主役を担う俳優でこれを成立させられる人はじつはとても少ない。
四季退団後は休養期間を経てミュージカルやストレートプレイの舞台に加え、映像の世界にも進出した石丸。アノ作品の「土下座」で一気に世間の認知度を上げる。そう、2013年に放送されたTBS日曜劇場の『半沢直樹』だ。半沢(堺雅人)最初の敵として現れた浅野支店長の嫌味な上司ぶりや、悪事を暴かれ土下座の末に半沢に追いすがる演技が評判を呼び、石丸はその後も映像の世界でさまざまなキャラクターに挑んでいく。
近年の映像作品で特に印象的だったのは、『半沢直樹』に続いて出演したTBS日曜劇場『ルーズヴェルト・ゲーム』の三上文夫役やNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の国実恒一役。
『ルーズヴェルト・ゲーム』では浅野支店長から一転、弱小野球チームを何とか存続させようと部員のために熱く戦う男を演じ、初の朝ドラ出演となった『とと姉ちゃん』では、ヒロインが出版する雑誌の商品調査方法を疑い、しつこく取材する新聞記者を演じていた。
最近では木村拓哉主演で話題を呼んだ『グランメゾン東京』(TBS系)でのこだわりが強く、簡単に取引をしない猟師兼料理人の峰岸剛志役や、『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)で、娘のために会社の金を横領し、服役後に漁港の食堂で働く父親といったクセが強めの役も演じ、大きなインパクトを残している。