『エール』根本真陽、“華ちゃん”として朝の癒やしに 青年期を演じる古川琴音にも期待
回を重ねる毎に重苦しい空気が一層濃くなっていく、朝ドラ『エール』(NHK総合)。その戦時中の空気を幾分晴れやかにしてくれる存在がいる。それが、裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)の一人娘・華(根本真陽)だ。
朝ドラにおいて、主人公の人生が長く描かれる時、その息子、娘が何代かにわたって演じられることが慣例にある。近作では『スカーレット』の主人公・喜美子(戸田恵梨香)の息子・武志を、又野暁仁(幼年期)、中須翔真(少年期)、伊藤健太郎(青年期)の3名が演じた。そして、『エール』の華も田中乃愛(幼年期)、根本真陽(少女期)、古川琴音(青年期)の3人によってバトンが繋がれることが決まっている。最終的な注目はどうしても青年期を演じる役者に向くが、真ん中の子役にはその役のイメージを崩さずに橋渡しをするという重要な役割を担っている。
根本真陽が演じる華が初めて登場したのは、第16週「不協和音」の第76話。音が開く音楽教室で歌う11歳になった姿だ。幼年期の頃と比べ、華には変わらない部分と少しづつ変化している部分がある。
まず、変わらない部分は音に似て少々気は強いが優しく、無邪気なところ。裕一や音、喫茶・バンブーの保(野間口徹)と恵(仲里依紗)、梅(森七菜)と五郎(岡部大)と仲良しなのも相変わらずだ。甘いものに目がない華にバンブーの2人は戦時中の貴重な物資で作ったクッキーやケーキをプレゼント。幸せそうなその顔は小さい頃の華の表情と自然とリンクする。「梅ちゃん」「五郎ちゃん」と呼ぶほどに気心の知れた仲の華は、2人の結婚を誰よりも喜んでいた。思い返せば、五郎が梅の小説を人知れず読んでいることを伝えたのは華であり、間を取り持ったキューピッドのような存在でもある。新婚ほやほやの2人に裕一と音だけでなく、華までもが嬉しそうに、にんまり顔を浮かべていた。
父への愛が顕著に表れていたのは、睡魔と戦いながらも裕一の帰りを待つシーン。「お父さんだ!」と一目散に玄関へ駆けていく華は、久しぶりに帰宅した裕一に鉄男(中村蒼)からもらった羊羹を取っておいたと父の手を引く。仕事そっちのけでおもちゃを自作し、華に人一倍の愛情を注いできた裕一にとって嬉しい結果と言うべきか。元気な「おかえり!」の声からは、子供ながらに父の無事を祈る華の思いが伝わってくる。
音が華を抱きかかえたまま、「夢は諦めてない。お父さんに預けてある」と告げる場面は、第17週「歌の力」における屈指の名シーンだった。「2人で叶えるの」と続ける音に、華は「そっちのほうが楽しそうだね!」と返す。音が自分のために歌をやめたことを知り、華はショックを受けるが、考え方を変えれば歌をやめていなければ華には出会えなかったかもしれない。大きな劇場で歌う母の姿が見たいと華が望む時、それは2人から3人の夢に変わっていることになる。