『エール』再放送の2カ月で深まった世界観 いよいよ再開の第14週は森七菜の魅力が爆発?
朝ドラ『エール』(NHK総合)が、9月14日より約2カ月半ぶりに本放送を再開する。
6月26日の本放送をもって異例の再放送に切り替わった『エール』。この間も、出演者がその配役視点で解説を入れる副音声や主題歌「星影のエール」をドラマ出演者で歌い継ぐ「みんなで星影のエール」、8月8日オンエアの『ライブ・エール~今こそ音楽でエールを~』(NHK総合)では大々的に『エール』特集が組まれ、朝ドラ受けでお馴染みの『あさイチ』(NHK総合)には森山直太朗や津田健次郎が出演するなど、本放送再開に向けて希望を途絶えさせない制作陣ならびにNHK全体の気概を感じさせた。
13週分を丸々もう一度振り返るこの期間は、多くの視聴者にとって『エール』を再解釈する有意義な時間であったように思う。全体の前半パートとなる第13週までは、裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)が出会い、互いに手を取りながら夫婦として歩んでいく様子、裕一は作曲家、音は歌手としてそれぞれに共通する音楽という夢に向かっていく物語が描かれている。また、『エール』は様々な人との出会いと別れによって夫婦が強くなっていくストーリーということも重要なポイントだ。
再解釈ということでは、第1回の放送で鉄男(中村蒼)が藤堂(森山直太朗)の墓前に手を合わせるシーンは大きな話題となった。鉄男は墓前に「大将」とデザインされたカップ酒と東京オリンピックの実況が流れるラジオを置き、「あの裕一が、いじめられっ子の裕一が、ついにやりましたよ。先生」と語りかける。藤堂の父・晴吉(遠藤たつお)が元軍人で今でも陸軍とのやり取りがあることは作中でも描かれているが、すでにオンエアされている後半のみどころの中で、藤堂が軍服を着て出征するシーンが存在する。分かってはいながらも今から覚悟のいる、後半のムードを一瞬で伝える力のある画である。
ほかにも、副音声による解説は視聴者が気づきづらかった描写を際立たせる役割を持ち合わせていた。例えば、「続きは来週! いよいよ放送再開だ!」と威勢よく再放送のラストを飾った落合吾郎(相島一之)の副音声では、コロンブスレコードに研究生として契約となった久志(山崎育三郎)がスターになるという自信の表れから「白のスーツ」を着てきたことに着目させ、「環のパリの物語」でラストに映し出される嗣人(金子ノブアキ)が描いた絵画は、『蝶々夫人』を演じる環(柴咲コウ)の姿であることを補足する。
中でも、「見落としていた!」と思わず唸ったのが、保(野間口徹)と恵(仲里依紗)の物語「古本屋の恋」での、恵による解説だった。ヒポクラテスの格言「学は長く人生は短い」を恵から教えられた保は、棚に並べられている工業教育に関する本をチラッと眺める。これは格言が示している通りに、工業教育を学ぼうとしている保だが、手つかずのままで彼が生き方に揺れていることを表す描写。細かなレベルで観ていけば、さらに世界観が広がっていくのだと気付かされた2カ月半でもあった。