清原果耶、“国民的女優”への第一歩 『宇宙でいちばんあかるい屋根』は紛れもない代表作に
清原果耶が近い将来、国民的女優と呼ばれている姿は、すでに多くの者が想像し、予感していることであろう。清原は今年から来春にかけて映画6作に出演し、2021年春に放送が予定されている朝ドラ『おかえりモネ』(NHK総合)ではヒロインを務める。そんな清原にとって、怒涛の始まりを告げるのが、満を持しての映画初主演作『宇宙でいちばんあかるい屋根』だ。
監督を務めた藤井道人は、2019年1月に公開された映画『デイアンドナイト』で清原の豊かで凄みを持った演技力に惚れ込み、今回主人公のつばめ役に抜擢したという。『デイアンドナイト』のプロデューサーを担当した山田孝之もその演技を高く評価していたヒロイン・奈々役は、つばめとは正反対とも言える役柄。それでも、藤井が清原につばめ役を任せたのは、2018年にドラマ初主演を飾った『透明なゆりかご』(NHK総合)にて、小さな命と向き合うひたむきな姿からだった。
14歳のつばめは、突如目の前に現れる老婆・星ばあ(桃井かおり)と出会い、隣人の大学生・亨(伊藤健太郎)に恋をし、育ての母(坂井真紀)と産みの母(水野美紀)との間で疎外感を抱き逡巡する。そんな思春期真っ只中の揺れ動く心情を、清原は鮮やかに演じきって見せている。「歳食ったらなんだってできるようになるんだよ」ーーそんなひょうひょうと力強く生きる星ばあに導かれるつばめは、逞しくも、時折脆い。水槽の中でたゆたうクラゲは自由のメタファーでありながら浮き沈みする感情のようでもある。溢れ出す涙とともに真っ逆さまに落ちていくつばめの心を抱きしめてくれるのは星ばあであるが、青く瑞々しい演技から一転して情感たっぷりにつばめの弱さを演じる清原の芝居には見るものを引きつける力があった。
思わず階段を軽やかに駆け下りてしまうような淡い恋愛。中学生と大学生という離れた年の差からは、憧れも多く入り混じっているのかもしれない。それでも、と亨のために勇気を持って一歩踏み出していくつばめの姿は、微笑ましくも、どこかに忘れ去っていたピュアな感情を呼び起こしてくれる。同じ大切な人でも、星ばあに見せるのとはまた違う、つばめの晴れやかな笑顔は、ただ一緒にいたいという憧憬の念を映し出す。