清原果耶、“国民的女優”への第一歩 『宇宙でいちばんあかるい屋根』は紛れもない代表作に
今作は清原による演技の振り幅を堪能できる作品であるが、その針が最も片側に向くのが、溜め込んだ感情を両親に爆発させるシーンだ。鋭い言葉の向けた先は、後悔となって自分に返ってくる。危うく、感傷的なその場面は、表情、間、佇まいといった要素で、『デイアンドナイト』にも通ずる凄みを見せつける。清原は自身をその役柄に染め上げるため、撮影までにセリフや動き、衣装に至るまでの全てを把握しておきたいタイプの役者である。清原の名を世に知らしめた朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)では、ヒロイン・なつ(広瀬すず)の生き別れた妹を演じるにあたって、視聴者の想像を邪魔しないようにとその登場回の放送まで一切事前情報を出さないようにしたのは、清原本人であった。今回の『宇宙でいちばんあかるい屋根』でも、清原は藤井監督とともに、納得するまでつばめについて語り合ったという。18歳とは思えない役への入れ込み方だ。
加えて、清原の映画初主演作としてその期待に応える作品としているのは、彼女が主題歌を歌唱していることにもある。「今とあの頃の僕ら」はCoccoが作詞、作曲、プロデュースを担当。これまでも、映画『愛唄 -約束のナクヒト-』や『デイアンドナイト』の主題歌として野田洋次郎(RADWIMPS)の作詞、作曲、プロデュースの「気まぐれ雲」を歌唱していたりと、透明感のある歌声を響かせていた清原。流麗なメロディーラインの「今とあの頃の僕ら」を、彼女は真っ直ぐでいて、力強く、澄んだ歌声でつばめという一人の少女を体現している。プライベートでも交流のある上白石萌音や同世代の森七菜が、歌手としてもより俳優の色を濃くしているように、清原も彼女らとは別軸で表現の幅を広げていくことだろう。
これから出演ラッシュを控える清原が、来年自らが歩んできた道を振り返ったとき、いちばんあかるく光るのはこの作品になると予感させる力が、『宇宙でいちばんあかるい屋根』にはある。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter
■公開情報
『宇宙でいちばんあかるい屋根』
公開中
出演:清原果耶、伊藤健太郎、水野美紀、山中崇、醍醐虎汰朗、坂井真紀、吉岡秀隆、桃井かおり
監督・脚本:藤井道人
原作: 野中ともそ『宇宙でいちばんあかるい屋根』(光文社文庫刊)
主題歌:清原果耶「今とあの頃の僕ら」(カラフルレコーズ/ビクター)
作詞・作曲・プロデュース:Cocco
配給: KADOKAWA
(c)2020『宇宙でいちばんあかるい屋根』製作委員会
公式サイト:https://uchu-ichi.jp/
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