『MIU404』を最終回直前におさらい 綾野剛×星野源は“最強の悪役”菅田将暉にどう立ち向かう?

『MIU404』を最終回直前におさらい!

 それでいて、第10話のラストでは、4機捜自体が久住のフェイクに引っかかるのが、このドラマの侮れないところ。ドラマの最重要案件である、裏カジノのオーナー・エトリの存在も、これまで久住説であったり、警察関係の人物など色々と推測されたが、第9話で水橋研二がエトリ役としてあっさり登場し、最後は護送中に久住のドローン爆撃により死亡する。その素性は5年前に死亡したとされる殺人事件の容疑者・鴻上悟という男。警察の追跡を逃れるために自殺を偽装して整形後、エトリは裏社会でのし上がり、久住と出会い、利用していたつもりが、久住の一つのコマとして逆に利用されていたのだ。久住はエトリについて「俺たちのボス猿的存在」と話している。久住が鴻上悟をボスに仕立て上げたのか、自力で成り上がったのは定かではないが、フロント企業のようにエトリがいたことで、久住が暗躍できたのは間違いなく、捕まったことで自分に都合が悪くなったので切り捨てた、ただそれだけのこと。2年前に警察がエトリを取り逃がしたのも陰謀説があったが、おそらく久住の機転で純粋に警察が取り逃がしたと推測される。

 相手を簡単に切り捨てるドライさと、切羽詰まった状況でも自分が捕まらないという自信と説得力。久住が恐ろしいのは、悪事をすることを全く恐れていないこと。物理的に逮捕するだけではなく、いかに久住の心に正義を訴え、どう決着をつけるのか……間違いなく、『MIU404』の物語を完結させる上でもかなりの難題だ。

 またエトリの特徴が、ネットを利用して世論に攻撃をさせていること。主演ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)で、あれだけネット上での誹謗中傷やフェイク動画など、SNSは人を傷つけるからやめてくれと、ドラマ史上かつてない大演説をした菅田の本作でのギャップに思わず驚かずにはいられない。

 志摩は久住のことを“メフィストフェレス”に例えていたが、ファウスト伝説に登場するメフィストは誘惑の悪魔とされ、ファウストの望みを何でも叶える代わりに、その魂をもらう悪魔の契約を交わす。つまりファウストが満足した時点で悪魔の勝ち。学問に没頭していたファウストは若返って少女と出会い「愛」を知り、街を作り変えるという生き甲斐を見つけ、命が絶たれる。よく言われるのが、メフィストは悪の象徴でありながら、善を知ることができる存在だということ。久住も“関西弁の気さくなお兄ちゃん”として近づき、弱っている若者に居場所を与えるのと同時に、ドーナツEPというドラッグを与えて、中毒にさせる。これまで本作の犯罪者たちは、犯罪に至る動機にそれぞれの正義を抱えていたが、果たしていまだに全く何者か掴めない久住にもそうした大義があるのだろうか。最終回が待ちきれない。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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