『JOKE』はコロナ禍と向き合った新しいドラマに? 宮藤官九郎×生田斗真×水田伸生への期待

 面白いのは宮藤、訓覇と共に、チーフ演出としてNHKの朝ドラ『あまちゃん』、『いだてん』を手掛けた井上剛も先日、又吉直樹の脚本で『不要不急の銀河』(NHK総合)というコロナ禍を描いたドラマを手掛けたことだろう。

 本作はスナック「銀河」を営む夫婦とその家族の物語なのだが、面白いのはドラマと共に制作過程をドキュメンタリーとして放送していたこと。そこでは番組スタッフが新しい撮影ガイドラインに沿った上で、いかに創意工夫をしているかが、克明に記録されており、ノウハウを残すという意味においても貴重なものとなっている。

 『あまちゃん』『いだてん』を筆頭に、井上の演出した作品は、ドキュメンタリー性とファンタジー性を兼ね備えた虚実が融合したものが多く、綿密に取材を重ねてリアリティを追求すればするほど、幻想的な影像に仕上がっていた。

 思えば訓覇が先日手掛けた『Living』も、物語自体は近未来を舞台にしたファンタジーテイストの作品でありながら、広瀬アリス&広瀬すずといった、実際の姉妹、兄弟、夫婦が出演しており、ファンタジーでありながらドキュメンタリー的な作品だった。

 『JOKE』は生配信を題材にしたAIロボットの登場する近未来の話だが、本作もまた、虚実の入り混じったドラマとなるのだろう。そして作中には、宮藤自身がコロナウイルスに感染し、入院した時の経験や心情が反映されるのではないかと思われる。

 最後に注目なのが、演出を担当するのが日本テレビ所属の水田伸生だということ。水田は坂元裕二脚本の『anone』(日本テレビ系)や、野木亜紀子脚本の『獣になれない私たち』(日本テレビ系)といった話題作を手掛けており、宮藤とはドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)などを手掛けている。水田が坂元裕二の脚本を演出した『モザイクジャパン』(WOWOW)など、日本テレビの制作会社アックスオンとNHKが共同製作をおこなう事例は近年増えているが、他局のクリエイターが組んだ作品としても貴重である。

 『いだてん』チームが『不要不急の銀河』『JOKE』を作るという流れ、コロナ禍に対する作り手のアプローチは、リモートドラマを急ごしらえで作るという段階から、次のステージに入ったと感じる。作品内容はもちろんのこと、その製作手法もまた、要注目である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『JOKE〜2022パニック配信!』
NHK総合にて、8月10日(月)22:00〜22:45放送
作:宮藤官九郎
出演:生田斗真、柄本時生、松本まりか、岡部たかし、田村健太郎、一色洋平(声の出演)、佐々木史帆(声の出演)
制作統括:訓覇圭(NHK)、仲野尚之(アックスオン)、後藤高久(NHKエンタープライズ)
演出:水田伸生(アックスオン)
写真提供=NHK

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