『わたナギ』と『おっさんずラブ』に共通する“らしさ”からの逸脱 脚本・徳尾浩司の手腕を読む

『わたナギ』『おっさんずラブ』の共通点は?

 『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)は、「女性が外で働き、男性が家事をしたっていいじゃないか」というジェンダーロール問題を誰にでも親しみやすく描いている。

 主人公メイ(多部未華子)は製薬会社のMR(営業担当)として働いていてとても有能。その代わり、プライベートは捨てている。恋人はいないし、部屋は散らかりっぱなし。料理もまったくやらない。そこまで仕事にのめりこんでいる理由は、母・美登里(草刈民代)に「男の子に負けない仕事ができる女性になる」という“呪い”をかけられていたから。

 ジェンダー問題の観点からいえば、母親が「女の子はお嫁さんになるもの」という呪いをかけていないのだから良さそうなものなのだが、メイは残念ながら「お母さん」になりたかったのだ。それが母の言いつけに縛られたため人生設計がズレてしまったといえる。しかも母親は28歳になった娘に嫁に行くべきと、いまになって言い出して、メイを悩ませる。

 母親が深く考えずに子供に言葉を発してしまうことが一番の問題であるがそれはさておき、メイはどうしたらいいのか……?というところで現れたのが、家政夫ナギサさん(大森南朋)。メイの健康状態を心配した妹・唯(趣里)が敏腕家政夫ナギサさんを紹介したことで、メイの生活は一変する。

 ナギサさんのおかげで部屋は片付き食生活も改善したものの、メイには気にかかることが。それはナギサが「男性」しかも「おじさん」であることだった。ナギサは「おかあさん」になりたくて自分が「おじさん」であることを気にしているのだが……。

 ドラマは2話、3話と進み、ジェンダーロール問題よりもメイの恋愛及び結婚問題に突入した感があり、メイの前に、ライバル製薬会社の営業・田所(瀬戸康史)とメイと田所が営業をかけている病院の医者・肥後先生(宮尾俊太郎)とふたりのイケメンが現れる。メイはお嫁さんになって子供の頃の夢である「お母さん」になることを実現させるのか。がんばってきた仕事はどうなるのか……。

 とても軽快な運びで、気楽に観ることができるドラマ。脚本家が『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の徳尾浩司であると知ると、この口当たりの良さはナットクする。目下、深夜に再放送中の『おっさんずラブ』は徳尾のオリジナル脚本で、ぐーたら生きていきた主人公・春田(田中圭)が突如、上司・黒澤(吉田鋼太郎)と同僚・牧(林遣都)から好かれ、ふたりの間で揺れ動く。恋愛ドラマは男女の恋を描くものという世間一般の認識を覆し、社会現象を巻き起こし、映画化もされ、ドラマの続編まで生まれたヒット作である。

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