『ドンテンタウン』特別対談
佐藤玲×笠松将が語り合う、役者としての在り方 「自分のできることを最大限引き出すこと」
青空の見えない長い梅雨が続いている2020年7月。そんな現在の空模様と地続きのような、映画『ドンテンタウン』が現在公開中だ。音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB 2019」長編部門にて準グランプリを受賞した本作は、古き良き日本の団地を舞台に、シンガーソングライターのソラと、贋作画家として日銭を稼ぐ青年トキオが、奇妙な形で交わり合っていく不思議な物語だ。
ソラを演じた佐藤玲、トキオを演じた笠松将は、友達とも恋人とも言えない不思議な男女の関係をどう演じたのか。同級生の2人が息の合ったトークを展開してくれた。【インタビューの最後に佐藤玲×笠松将のサイン入りチェキプレゼントあり】
“同級生”だからこその絶妙な距離感
ーー笠松さんには何度もインタビューさせていただいていますが、こうして同級生、しかも女性とのツーショットは珍しい感じがします。
笠松将(以下、笠松):そうですか(笑)。佐藤さんが『ドンテンタウン』で演じたソラちゃんは、すっごい可愛いんです。
佐藤玲(以下、佐藤):やめてよ〜!
笠松:でも、普段の「佐藤さん」は全然甘くないんです。サトウなのに……。
佐藤:大丈夫? それ面白いの?(笑)
笠松:(笑)。現場でも線を引かれるというか……。なので、今も適度な距離感、“ソーシャルディスタンス”をしっかり取って接しています。
佐藤:そんなことない! 撮影前に連絡したらすごい素っ気ない返事をして。だから、私も礼儀正しく、今回は適度な距離感を取ろうと思って。
笠松:なんかずるいな(笑)。取材前はそんなこと言ってなかったのに。
佐藤:まぁまぁ。とにかく、“同級生”という心強さはあったので、特別たくさん話さなくてもわかり合えている感覚はありました。「撮影中にはご飯を食べに行って、仲良くならなきゃ!」といった身構えるようなことをしなくても、自然と現場にいられるというか。
笠松:そうですね。
ーー佐藤さん演じるソラが引っ越した先の前の住人が笠松さん演じるトキオ。ソラはトキオが残していったカセットテープ日記を聴きながら、その存在を感じていきます。ソラにとって、トキオは幻なのか、それとも現実なのか。解釈は観客に委ねられていますが、そんな不思議な距離感が、いまの2人の距離感ともリンクするように感じました。
笠松:たしかに。恋人役だったらこうはならなかったかも。
ーーソラは録音されたトキオの声を聴きながら日常生活を送っていますが、現場でも実際に聴きながら撮影を?
佐藤:撮影中は聴いていないですが、録音された声は事前に聴いていました。内容を聴きながら、間を考えて、想像しながら演技をしていきました。
ーー1992年生まれの2人は、これまでカセットテープを使ったことはありましたか?
笠松:振り返ってみると、小学2年生の頃がCDプレイヤー、4年生の頃がMDプレイヤー、中学1年生からiPodだったので、僕はカセットテープを自分では使っていなかったんですね。もちろん、存在は知っていましたし、学校の教材などでカセットテープが使用されていたので。
佐藤:私はリアルタイム世代ではないんですが、宇多田ヒカルさんやMISIAさんの曲をカセットテープに入れて聴いていました。家族のドライブではそのカセットテープを聴いて。私たちぐらいの世代がギリギリ使っていた世代かもしれないですね。
ーーカセットテープもそうですし、舞台となる団地の雰囲気も含めて、不思議な郷愁が本作にはあります。
笠松:先程おっしゃっていたように、ソラにとってトキオは妄想なのか、現実に存在しているのか、映画では明確に答えを出していません。僕たち自身も答えを知っているわけではない。映画全体を包み込む郷愁と、そんな不思議な感覚と、そして61分という短さ、どれをとっても“いいな”と思える作品になっているのではないかと思います。
ーー笠松さんは、当サイトでイラスト連載もしているように、画家役は待望だったのでは?
笠松:そうなんです。僕が絵を描くのが好きなことを監督も知らなかったみたいなのですが、本当にうれしかったですし、マネージャーもすごく喜んでくれました。
ーー一方、佐藤さんはシンガーソングライターの役で劇中でピアノの弾き語りも披露していますが、まったくの未経験だったと聞いてびっくりしました。
佐藤:ピアノは全然弾けなかったんです。楽譜もなかったので、曲を耳で聴いて、「この音かな?」って探りながらやっていた感じで。
笠松:本当に? それ凄すぎでしょ。
佐藤:いやいや。劇中、ソラ自身が未完成の曲を作っていくというシーンだったので、その探り探りがちょうど一致したのが良かったんだと思います。