『アシガール』の未来は果てしなく続いていく 視聴者を幸福にした唯と若君の恋

『アシガール』の未来は果てしなく続いていく

 オンデマンドでも観られるし、熱烈なファンならソフトも持っていたり、本放送を録画していたりもするであろうが、やっぱり、決まった放送時間に集中して観て、SNSでハッシュタグをつけながらつぶやきを分かち合うことは楽しかった。今回の再放送には、赤ペン瀧川による解説がついて、その回の見どころ紹介とその回の振り返り、次回の見どころが放送前、放送後に語られたが、当初、ネタバレが過ぎるとSNSで話題になった。すでに観たことのある視聴者までもが「ネタバレ」を避けたがるので、じょじょに語られる見どころは少なくなっていった。赤ペン瀧川本人がSNSで反省を述べていたが、それでもなおネタバレと言われるなど、わざとやってるんじゃないかと思えるほどで、テレビと視聴者のコール&レスポンスも含めて再放送を楽しめた。第1話放送時にはパソコンを見ながら語っているようだった赤ペン瀧川がじょじょにパソコンを見ずに語るようになっていたことには親しみを持てた。

 本放送から3年が経過、黒島も伊藤もそれぞれ俳優として活躍、若手の先頭集団のひとりに成長している。黒島は『SICK'S 〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿〜』(Paravi)の謎の能力者や、再放送中の『死役所』(テレビ東京系)、先日最終回を迎えた『行列の女神~らーめん才遊記~』(テレビ東京系)などで好演。7月3日から配信が開始されるNetflix『呪怨:呪いの家』ではヒロインを演じる。伊藤は映画『今日から俺は!!劇場版』が7月17日から公開、横浜流星とのダブル主演舞台、横浜が宮本武蔵で伊藤が佐々木小次郎を演じる『巌流島』に続き(コロナ禍によって公演数が大幅に縮小されてしまったことは残念だが)、力士役を演じる『両国花錦闘士』にも主演する。とりわけ『両国花錦闘士』の宣伝ビジュアルの肉体美が話題だ。お互い着々と力をつけて、『アシガール』終了後から少し大人になった唯と若君の物語を演じる日が来ることを私たちは夢に見る。ドラマ『アシガール』の良いところは未来の夢が果てしなく続くことなのである。

■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。

■放送情報
『アシガール』(再放送)
NHK総合にて、毎週金曜22:00〜放送
出演:黒島結菜、伊藤健太郎、松下優也、ともさかりえ、川栄李奈、石黒賢、イッセー尾形ほか
原作:森本梢子
脚本:宮村優子
音楽:冬野ユミ
演出:中島由貴、伊勢田雅也、鹿島悠(NHKエンタープライズ)
制作統括:内田ゆき(NHKエンタープライズ)、土屋勝裕(NHK)
写真提供=NHK
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/ashigirl/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる