加瀬亮が『SPEC』で担った重要な役割 戸田恵梨香との主役バディの魅力が軸に
瀬文と当麻の協力関係は、第5話で里中の病気の娘を救うため助力を求める瀬文に、当麻が「私情は禁物です。でも、はい」と応じるなど、事件を通じてより強固になっていく。第8話では瀬文が「お前と出会えてよかった。と、たまに一瞬まれに思う」と当麻に打ち明けると、当麻も「あたしは瀬文さんのこと仲間だと思ってます。(中略)絆はあったとあたしはだいぶ思ってます」と思いを伝えた。
ここまで来ると2人の間に恋愛感情が生まれてもおかしくないが、そうならないのが『SPEC』のユニークなところだ。実際、台本では恋愛を匂わせる箇所もあったというが、恋愛関係にならない男女バディという路線は最後まで維持されていた。恋人になるには瀬文と当麻は多くのものを背負いすぎており、にもかかわらず孤独を抱えた2人の支え合う姿は見るものの心を打つ。
瀬文自身がスペックホルダーではない点もポイントだ。連続ドラマの後半以降はスペックを持つゆえの悲哀というテーマも色濃くなる。スペックの存在を媒介にして出会ったバディも、互いを知り、連携を深めながら、ついにはそれぞれの存在を賭けて対峙する。シリーズの完結編『劇場版 SPEC〜結』では、作品の世界観そのものを背負うことになった。まさに特殊能力の存在を前提として、バディの関係をとことん煮詰めた作品が『SPEC』なのである。
『SPEC』以降、加瀬は海外の映画作品にもより積極的に参加するようになり、演技の幅を広げている。『SPEC』のバディ経験がその一つの契機となったことは想像にかたくない。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
『SPEC 一挙放送SP』
TBSにて放送(一部地域を除く)
第9話:6月24日(水)23:56〜24:55
第10話:6月25日(木)23:56〜24:55
演出:堤幸彦、加藤新、今井夏木、金子文紀
脚本:西荻弓絵
プロデュース:植田博樹、今井夏木、赤羽智比呂(オフィスクレッシェンド)
出演者:戸田恵梨香、加瀬亮、福田沙紀、徳井優、安田顕、田中哲司、城田優、有村架純、伊藤毅、神木隆之介、椎名桔平(特別出演)、竜雷太
製作著作:TBS
制作協力:オフィスクレッシェンド
(c)TBS