声優・杉山里穂が『波よ聞いてくれ』で見せた存在感 難役をこなした“高い演技力”に迫る

 北海道にあるとあるラジオ局を舞台に個性的な登場人物の人間ドラマを描いたTVアニメ『波よ聞いてくれ』(TBS系)が、6月19日に最終回を迎える。ドラマやアニメ化が困難と称された本作だが、ひょんなことからラジオパーソナリティーとして活動することになった傍若無人で破天荒な主人公・鼓田ミナレを演じる杉山里穂の演技に注目が集まっている。

 2015年に声優としてデビューした杉山は、2018年放送のTVアニメ『実験品家族 -クリーチャーズ・ファミリー・デイズ-』のタニス役で初主演を果たしている。過去には『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』のアニータ役や『CONCEPTION』のタルア役、『ブギーポップは笑わない』の橋坂静香役など数々の作品に出演。しかし、アニメ作品への出演は決して多くはなく、むしろ海外ドラマの吹き替え声優としての仕事が目立つ。だが、今期は『波よ聞いてくれ』以外に、『継つぐもも』ではメインキャラクターの安次峰あるみ役に抜擢され、おしとやかで初心なキャラクターというミナレとは相反する役柄を演じ、アニメ声優としての引き出しの多さを印象づけることにも成功している。

 これまで主役級のキャラクターを演じる機会にあまり恵まれなかった杉山だが、『波よ聞いてくれ』を通して脚光を浴びることになったのは彼女の経歴を見ても決して偶然ではないことが分かる。というのも、過去に杉山は海外ドラマ・映画を中心に30以上もの吹き替えをしており、劇画的な作風の本作を演じるうえでは、この豊富な吹き替えの経験が下地になっていると言ってもいい。

 本作を手掛けたサンライズのプロデューサー・大塚大氏も「『波よ聞いてくれ』という作品が、アニメよりも実写寄りの作品と考えていましたので、劇伴の使い方、効果音のつけ方、キャスティング諸々が実写寄りの演出が合うだろうと考えていました」と話しているように、杉山の吹き替え経験の豊富さがキャスティング抜擢の決め手のひとつになったことは明らかだ(引用:無音3秒続かない、異色アニメ『波よ聞いてくれ』 声優がラジオを舞台に喋り倒す|ORICON NEWS)。脇を固める声優陣も『007』シリーズの藤真秀や『スター・ウォーズ』シリーズの浪川大輔など吹き替え経験豊富な錚々たるメンバーが名を連ねている。

 このように吹き替えの経験が本作を演じる上で重要になっているわけだが、もちろんそれだけが杉山が難役に抜擢された理由ではない。本作ではラジオがひとつのテーマということもあり、“語り”が作品の根幹を成している。第1話では冒頭から約10分間もミナレによる独白が続いている。実際に本作のミナレのセリフは8〜9割を占めており、それでいながら1話あたりの密度が非常に濃い。この膨大なセリフ量こそアニメ化が実現不可能であるかのように思われた理由であり、そこでマシンガントークを繰り広げるミナレは難役と言っていいだろう。このミナレ役を誰がどう演じるかが本作の焦点だった。しかし、蓋を開けてみればミナレを演じた杉山の演技は多方から支持を受け、原作ファンすらも虜にしてしまった。

 そこには杉山の高い演技力が見いだせるだろう。先述した吹き替えの豊富な経験によって確立されたものだと思われるが、流暢な台詞回し、低いトーンで感情の抑揚を表現する声幅の豊かさは想像を超えるもので、原作の沙村作品の特徴でもあるテンポ抜群なセリフ回しを杉山は見事演じることに成功している。セリフの多い映像作品で問題になるのは、いかに視聴者を飽きさせずそのセリフを魅力的に聴かせるのかだが、高低のギアチェンジと絶妙な息遣いで、ラジオ収録の現場が眼前にあるかのようなリアリティが生まれている。例えば第1話のラストで元彼の光雄に対し「殺す!」と投げ捨てるシーンの前後の空気感たるや紛れもなく杉山の独擅場と化していた。

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