吉原光夫は“必ず結果を出す俳優”だ 『エール』馬具職人・岩城役に至るまでの“けもの道”

吉原光夫は“必ず結果を出す俳優”だ

 近年ではディズニー実写版映画『美女と野獣』で四季時代に演じたガストン役を吹き替え、アニメ『未来のミライ』(細田守監督)では「謎の男」役の声優を担当、公開予定の映画『燃えよ剣』(原田眞人監督)に伊東甲子太郎役で参加するなど、舞台以外でも活動の場を広げている吉原だが、テレビドラマへの出演は本作『エール』が初。

 これまで寡黙に馬具を作る姿か、時折深みのある言葉をつぶやく様子が印象的だった岩城が、安隆の登場によってどんな変化を起こすのか(幽霊になった安隆の姿は親族以外に見えない)、久々の登場シーンに注目したい。

 そして今後の展開で戦争が描かれるとしたら、軍のために馬具を作っている岩城にはきっと葛藤もあるはずだ。裕一(窪田正孝)や音がいる音楽の世界とは違う目線で戦争をとらえる人物として、岩城が激動の時代をどう生きるのかとても気になる。

 最後に吉原光夫という人物を一言で表すと「必ず結果を出す俳優」だ。大劇場のミュージカルから小劇場の演劇まで彼が出演する舞台にハズレはない。それは吉原がどんな現場でも作品や自分の仕事を突き詰めて突き詰めて身を削りながら芝居と向き合うからだろう。「楽そうだから」とふざけた理由でこの世界に足を踏み入れた青年が『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンと同じく180度の変化を経て、今は多くの観客に感動を手渡している。

 舞台からドラマの世界にも一歩踏み出した彼にあらためて大きなエールを送りたい。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土) (予定)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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