『鍵のかかった部屋』大野智×藤木直人が直接対決! 映像化されてこそ面白味が増すトリック

『鍵のかかった部屋』大野智と藤木直人が対決

 先週に引き続き、次回放送が延期されている『SUITS/スーツ2』とのコラボレーションから幕を開けた6月1日放送の『鍵のかかった部屋 特別編』(フジテレビ系)は、先週放送された「移動する穴」と同じく2014年の正月に放送されたスペシャル版の後編を再編集したものが放送。前編で描かれた事件の詳細については前述のコラボレーションシーンを用いたダイジェストでさらりと触れ、その分だけ榎本(大野智)が犯人である稲葉(藤木直人)を追い詰めていく“解答編”パートに重点が当てられる形となった。

 前編では総額10億円の絵画コレクションを美術館に寄贈しようとしていた資産家が殺される事件が描かれ、その犯人である美術館の館長・平松(佐野史郎)が館長室で死んでいるのが発見される。遺されていた遺書に書かれた資産家殺害の方法に違和感を感じた榎本は、それが偽物であることを断定。平松は何者かによって殺されたものと推理し、美術館で企画展を制作していた有名アーティストの稲葉が犯人であると確信する。そして後編となる今回のエピソードでは、誰も館長室に向かった形跡が残されていない監視カメラの映像を頼りにトリックを探っていった榎本が、芹沢(佐藤浩市)が見た不思議な現象をきっかけに答えにたどり着くのである。

 「密室の謎を解く」という至上命題のもとに成り立っている本作とあって、連続ドラマ時のエピソードも含めてミステリーの定番中の定番である“密室トリック”の推理に注力がされている。それだけに、そのいずれもが事件の発生後に犯人によって作り上げられた“架空の密室”に過ぎず、物理的に完璧で犯行不可能性の高い密室というのは極めて稀である(連続ドラマ版の最終回だけはかなり特殊なタイプであったと記憶しているが)。つまりは概ね、「これは密室だ」という錯覚から生まれた“心理的な密室”の謎を解くというものばかりで、それもまた密室ミステリーのごく一般的なあり方だ。

 しかし今回のエピソードで描かれる殺人事件の現場たる館長室には鍵はかかっておらず、あくまでもそこにたどり着くまでに通る必要がある稲葉のアートをどのように通るかということが、“密室”を生み出すものとなる。しかも犯人=稲葉であると推理されている以上、必要とされるのは監視カメラをいかにして欺くのかというトリックのみ。ハンプティダンプティの巨大なオブジェを使った「ホロウマスク錯視」と、偏光レンズと偏光フィルターを使って監視カメラの機能の粗をついた高度なトリックによって生み出された“監視カメラの記録上の密室”、つまり“視覚的な密室”は、たしかに映像化されてこそ面白味が増すものであったと断言できよう。

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