広瀬姉妹、永山兄弟、夢のラインナップが実現 『リモートドラマ Living』台詞の背後を深読み

『Living』台詞の背後を深読み

 どちらの話も、ドングリとの対話を通して小説家が紡ぎ出す物語だが、ドングリは「人類が滅びる。先生、それはとっても素晴らしいことです」「人間が終わっても、世界は別に終わりませんよ」と、人間は愚かで滅びてもいい存在なのだと「かわいい声」で語りかけてくる。

 作家は、そんなドングリに反発して「人間のすばらしさ」を描こうとするのだが、出来上がった物語は捻れてしまい、むしろ人間に対する不信感が強く現れたものとなっていく。

 ドングリに「もうおわかりのはずです。人類はこの世の嫌われものだってことに」と言われた作家は「わかってる」「ずっとそう思っていた、そう言いたくて作家になった」と言った後、「作家というものは人間の醜い部分を書くものなのだ」「危険な毒を吐くものなのだ」と言いながら「それが今やなんだ? 正直、現実の人間が醜くすぎて、私の吐く毒が毒ではなくなってしまった」と嘆き、こうなった以上「人間ってすばらしい」という物語を書こうと決意する。

 作家の言葉は、醜い現実ではなく美しい理想を描くと宣言しているように聞こえる。しかし、作品から受ける印象は真逆で、今のコロナ禍では、口に出すと不謹慎だと言われかねない毒のある絶望を優しく楽しい語り口で展開するという、フィクションでしかできないことを、しれっとやってのけているのだ。

 その表現としての大胆不敵さに、SNSも含めたコロナ禍の現実にうんざりしている現実よりも虚構が好きな筆者は、救いのようなものを感じた。

 台詞の背後を深読みしてあれこれ想像しても楽しめるし、広瀬姉妹、永山兄弟のイチャイチャ動画としても楽しめる最高のオムニバスドラマである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『リモートドラマ Living』
NHK総合にて放送

●第1夜:5月30日(土)23:30〜00:00
第1話 出演:広瀬アリス、広瀬すず
第2話 出演:永山瑛太、永山絢斗

●第2夜:6月6日(土)23:30〜00:00
第3話 出演:中尾明慶、仲里依紗
第4話 出演:青木崇高、優香(声)

●第1夜、第2夜(全話出演)
出演:阿部サダヲ、壇蜜(声)

写真提供=NHK
NHKドラマ公式Twitter:https://twitter.com/nhk_dramas

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