山崎育三郎は私たちを“新しい世界”へ導く 『エール』久志役に通じる、周囲に影響を与える求心力

山崎育三郎、『エール』久志役に通じる求心力

 何度か雑誌の取材でインタビューをさせてもらったこともあるが、作品や自分が演じる役に対してとても真摯に向き合っている人だと感じる。愛車に加湿器を積んでいるのももちろん喉のケアのためだろう。取材現場で出される飲み物のカップを持つしぐさがいつも綺麗なのも印象的だ。

 じつは山崎、ミュージカル界で指折りの「行動派」でもある。彼の誘いでクラシック界や声優業からミュージカルの世界に足を踏み入れた俳優も多く、城田優、尾上松也と結成した「IMY」では、将来、世界に通用するオリジナルミュージカルを作りたいと語る。また俳優たちがリモートで歌う「【Shows at Home】民衆の歌 / Do You Hear The People Sing ? - Les Miserables -」にも、発起人の上山竜治に加え、山崎の声がけで多数のミュージカル俳優が参加している。個人的な感覚だが、他の俳優にインタビューをした際、もっとも多く名前が挙がるのが山崎育三郎で、その求心力にいつも驚かされるのだ。

【Shows at Home】民衆の歌 / Do You Hear The People Sing ? - Les Miserables -

 『エール』第7週では音に音楽と向き合う勇気を与え、裕一との再会も果たした“プリンス”久志。今後も彼はふたりが進む音楽の道に多大な影響を与えていくのだが、その在り方は現場で周囲を巻き込み、新しい世界へ導く山崎育三郎自身の姿と重なって見える。

 山崎は4月から5月にかけてミュージカル『エリザベート』の東京公演で、“御手洗ミュージックティーチャー”役の古川雄大とともに黄泉の帝王・トートを演じるはずだった(新型コロナウイルスの影響により上演中止)。ミュージカル界の“プリンス”としての姿を劇場で観るのは少し先になってしまったが、そのぶん『エール』での活躍を楽しみにしたい。

 最後に久志、子ども時代の名言(?)を。「僕は存在感があるのに気配を消すのが得意なんだ」。さすがプリンス、ずっとブレない。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土) (予定)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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