『今だから、新作ドラマ作ってみました』に詰まっていた今を生き抜くヒント 3作品を振り返る

『今だから、新作ドラマ作ってみました』に詰まっていた今を生き抜くヒント 3作品を振り返る

 新型コロナウイルスの影響で、新作ドラマの多くが放送できない状態にある。ドラマだけではなく、演劇、映画などエンタメ作品の多くが公演中止、公開延期を余儀なくされ、それでも「自分たちに今できることはないか」と模索する表現者たちによる、完全リモート製作による表現活動が増えてきている。例えば行定勲監督の映画『きょうのできごと a day in the home』、柄本時生、岡田将生、落合モトキ、賀来賢人によって結成された劇団年一の『肌の記憶』、三谷幸喜作品のリモート読み合わせ『12人の優しい日本人を読む会』など。

 そして、NHKにおいて5月4日、5日、8日の深夜に放送された、完全テレワークで製作されたドラマ『今だから、新作ドラマ作ってみました』もそうだ。打ち合わせやリハーサル、本番収録まで直接会わずに製作された。NHKのドラマ公式サイトにおける「スタッフブログ」には、カメラ(携帯カメラにマイクと手軽なサイズの三脚をつけたもの)を自ら設置する柴咲コウらの姿や、1カットごとに各部署がモニター越しに確認し合い、細かい調整を繰り返す緻密な撮影の様子が綴られていて、とても興味深い(参照:『今だから、新作ドラマ作ってみました』スタッフブログ)。

 そんな初めてづくしの撮影方法で行われた実験的ドラマ3本は、これまで誰も経験したことのなかった未曾有の事態に晒されている我々の「今」を切り取った見事なオムニバスだった。

第1夜「心はホノルル、彼にはピーナツバター」(脚本:矢島弘一)

 満島真之介と前田亜季演じる、遠距離恋愛中のカップルの一見他愛もないリモートトーク。大真面目にビデオ電話越しの遠隔結婚式をするカップルの、傍から見たら滑稽な喜劇は、彼らがコロナ禍で、予定していたハワイでの結婚式の中止を余儀なくされた2人だという事実が明らかになることで悲劇に転じる。

 日本中いや世界中に、同様の悲劇に見舞われたカップルがどれほどいただろうか。出産とセックスレス問題に飛び火する赤裸々トークの末、赤道や福岡の位置にまでこだわり出す、犬も食わないリモート喧嘩は、恋人から夫婦になっていく過程にある2人の間に生じた、出産や育児、夫婦のあり方を巡る、男女間の認識の違いを浮き彫りにしていく。

第2夜「さよならMy Way!!!」(脚本:池谷雅夫)

 第1夜の2人の「近くにいたのに遠かった、遠くにいるのに近く感じる」という、多くのリモート対話を余儀なくされた人々に共感を抱かせる物語に、「死」というさらに大きな隔たりを加えて展開された物語が「さよならMy Way!!!」だ。

 小日向文世と竹下景子の『70才、初めて産みましたセブンティウイザン。』(NHK総合)コンビが演じる熟年夫婦、道男と舞子は、同じ空間にいるのに関わらず、片方が幽霊であるために、ビデオ電話を通してしか会えないという奇妙な現象下にいる。

 40年連れ添った夫婦に生じ、積み重ねられていった、皮肉で残酷なすれ違い。夫がどんなに良さそうな言葉を繰り返しても「建前はいいから」とバッサリと切り捨てる妻の厳しさは、「あなたの言葉で私を突き刺して」という最高にロマンチックな願いへと繋がる。

 第1夜と第2夜が描いたのは、2人の間に物理的な距離が生じてしまったがゆえに、これまでの関係性を振り返り、近くにいた時に伝えられなかった思いを吐露し合うことで、心理的な距離が縮まった2人の物語だ。

 ソーシャルディスタンスが強いられる今だから心の距離が離れていくのかと言うとそうではなく、傍にいることが当たり前だったこれまではどうだったのかと我々に問いかける。コロナ禍でリモート対話を余儀なくされたカップルだけでなく、テレワーク勤務により逆に物理的な距離が縮まったことで戸惑うカップルもいるだろう。時間のある今だからこそ、パートナーや家族との「当たり前」の関係性を見つめ直す絶好の機会でもあるのかもしれない。

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