現代の出来事とリンクする描写の数々 『JIN-仁-』が送る、医療最前線へのリスペクト

 さらに、ペニシリン開発はワクチン開発を急ぐ現代人の姿と重なる。本作では、ペニシリン開発のためにヤマサ醤油が一役買うが、異業種の支援という点では現在もトヨタ自動車株式会社が人工呼吸器の増産の支援チームを結成したり、シャープ株式会社がマスクの国内生産を始めるなど、こちらもつい現代での出来事を重ねて観てしまう。

 仁にとっては、自身の医療行為は歴史を歪めてしまうことに繋がる。しかし医師として、人として、苦しむ人をそのまま見殺しにできないという気持ちもあり、相反する2つの感情に苦しむこととなる。こうしたジレンマはタイムリープものの作品に度々登場するが、本作ではこの仁の苦しみを疫病と戦う町民を通して描き、SF、医療、歴史とジャンルをまたいだ魅力で視聴者の関心を誘った。

 歴史は繰り返すという言葉通り、新しい感染症が出るたびに人間はそのウイルスや病原菌との闘いを繰り返してきた。しかし、一度溢れた感染症に人類が完全勝利をおさめることは今でも難しい。現在、日本だけでなく世界中で繰り広げられている病原体との闘いの中、私たちにできることは何なのかを再確認することが大切だろう。エンタメを通して勇気と元気をもらい、前線へのリスペクトを忘れずに全うしたい。次週は江戸を飛び越え、現代との繋がりの正体が明かされそうだ。仁の奮闘を見守りたい。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
『JIN-仁- レジェンド』
TBS系にて放送 ※一部地域を除く
4月18日(土)14:00~16:54
4月19日(日)14:00~17:00
4月25日(土)14:00~16:54
4月26日(日)14:00~17:00
5月2日(土)14:00~16:54
5月3日(日)14:00~17:00
出演:大沢たかお、綾瀬はるか、小出恵介、桐谷健太、田口浩正、戸田菜穂、武田鉄矢、中村敦夫、高岡早紀、六平直政、麻生祐未、小日向文世、中谷美紀(特別出演)、内野聖陽
パート2出演:市村正親、佐藤隆太、市川亀治郎、藤本隆宏
原作:村上もとか「JIN-仁-」(集英社『SUPER JUMP』)
脚本:森下佳子
演出:平川雄一朗、山室大輔、那須田淳、川嶋龍太郎
プロデュース:石丸彰彦、津留正明、中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS

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