『エール』男性主人公、振り返りの土曜日は成功? 『あまちゃん』吉田照幸が描く人間の光と影

『エール』朝ドラの新しい挑戦は成功?

 さて、始まり方が凝っていた『エール』だが、週の終わりも新しかった。ドラマは週5日、土曜日はバナナマン日村勇紀が「朝ドラおじさん」と称してナビゲートする金曜日までの振り返りと次週予告。どういう体裁になるのかと思ったら、総集編に、日村が解説を入れていくという構成だった。

 唐沢寿明演じるお父さんが「いいキャラなんですよ」とか、久志のキャラが「大好き」とか、でも「やっぱ鉄男はいいですねえ」とか。音との出会いが「教会! いやあロマンチック」とか、楽しみポイントを簡単に教えてくれる。朝ドラとプリントしてあるシンプルな白Tシャツは衣裳として今後もずっと着用するのか気になっている。

 こうして見ると、『マッサン』以来の男性主人公ものは、親友ふたりも男性、恩師も男性、語りも男性、振り返りのナビゲーターも男性と、男性成分がかなり多い。男社会で差別されてきた女性ががんばるという物語が多い朝ドラで、ここまで男性ばかりがフィーチャーされるのも珍しい気がするが、多様性が問われるいま、女性の生き方を描くだけではない朝ドラのあり方にもトライしていくものになるような気がする。

 窪田正孝、中村蒼、山崎育三郎、唐沢寿明、森山直太朗という並びは華やかで、女性視聴者は満足であることだろう。それに、そうはいっても、第2週は、豊橋に暮らす音のターンらしく、柴咲コウも出て、女性成分もこれから増えていくことと思われる。

■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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