『恋つづ』は王道を超えた 視聴者の心に“恋”を灯した上白石萌音×佐藤健の功績

『恋つづ』は王道を超えた

 最終回だけでもこれだけ多くの胸キュン要素が盛り込まれていた本作。これ以外にも、キスやハグ、甘い言葉の数々など『恋つづ』に盛り込まれたキュンシーンは数知れず。こうした“胸キュン全部盛り”はラブコメの伝道作『花より男子』(TBS系)以来の衝撃だろう。まさに恋愛ドラマでときめきを感じたい人にはうってつけの作品であった。

 SNSなどでの反響の大きさに加え、安定した高視聴率も獲得した『恋つづ』。これはひとえに佐藤と上白石が築いていた作品の安定感ゆえだろう。恋愛ドラマが伸び悩む昨今のドラマ市場で、本作はしっかり結果を出した。その理由には、多くの視聴者が見たかった“王道のラブストーリー”דやりすぎなほどの甘い展開”があげられるのではないだろうか。

 さらに今やキャリアを持つ実力派俳優の域に達した佐藤健が、若手俳優さながらのキュンキュンラブコメに挑戦したことも大きい。佐藤のドSぶりは30代の俳優だからこそ出せた貫禄であり、そこからは腕のいい医師であることもしっかりと伝わってくる。さらに壁ドンやキスシーン1つとっても、ライトなキスではなく、しっかりと愛の感じられる濃厚な大人のラブシーンになっていたことも要因だろう。程よい刺激がラブコメに加わることで本作は魅力を増した。佐藤が培ってきた役者としての経験や知見の広さが本作をここまで押し上げたといえよう。


 一方で、上白石はそんな佐藤にしっかりついていくという健気さが七瀬と重なり、評価を得た。役者として佐藤の背中を追い、指導され伸びていく姿はまさに天堂と七瀬そのもの。物語の秀逸さだけではなく、役者陣の力あっての成功だったと感じる。

 30代に差し掛かる頃から、王道ラブコメやラブストーリーを演じなくなる俳優は多い。どうしても若手のフレッシュな役者が担うことが多いのが現実だ。しかし、今回の結果を踏まえると、熟練した芝居経験と、人生経験ゆえの深みのあるラブシーンはラブコメをより豊かにすることがわかる。この経験則から、今後こうした胸キュンラブストーリーが台頭することを期待したい。多くの人の心を潤した『恋つづ』には感謝の気持ちでいっぱいだ。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』
原作:円城寺マキ『恋はつづくよどこまでも』(小学館 プチコミックフラワーコミックスα刊)
出演:上白石萌音、佐藤健、毎熊克哉、昴生(ミキ)、渡邊圭祐、瀧内公美、吉川愛、堀田真由、香里奈、平岩紙、片瀬那奈、蓮佛美沙子、山本耕史
脚本:金子ありさ
演出:田中健太、福田亮介、金子文紀
チーフプロデューサー:磯山晶
編成・プロデューサー:宮崎真佐子
プロデューサー:松本明子
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS (c)円城寺マキ/小学館
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koitsudu_tbs/
公式Twitter:@koi_tsudu
公式Instagram:koi_tsudu

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