柄本佑は誰かを愛するとき、最高に魅力的になる “尾高さん”の虜になってしまう理由
前述の柄本明、弟・時生、亡くなった角替和枝(母)の俳優一家に生まれた柄本佑は子供のときから家族で映画の話ばかりしていたという話は有名。映画も演劇もものすごい量を見ているので、古今東西、二枚目の芝居を脳裏に焼き付けているのだと思う。おそらく、どういう立ち方、どういう喋り方、どういう角度がかっこいいかわかって取り入れているはず。例えば、往年の映画スター、ジェームズ・ディーンの斜に構えた立ち方や仕草など一時期の俳優たちは研究し取り入れていたと聞く。
柄本佑も膨大な映画アーカイブの中から誰かの仕草を取り入れているに違いない。なんなら、先日、日本テレビで深夜放送されたルキノ・ヴィスコンティの古典的名作『ベニスの死す』の究極の美少年・ビョルン・アンドレセンのアンニュイな表情すら尾高に見えてくる(妄想過ぎ)。でも、あのやや伏し目がちな眼は、なんともいえず色っぽい。朝ドラ『あさが来た』(NHK総合)で「白蛇はん」と呼ばれていた若旦那役も思えば、あやしい色気があった。そういえばこれも宮崎あおい演じる妻を愛し抜いて、すごく魅力的な人物になっていた。誰かを愛する気持ちを演じているとき、柄本佑は最高に魅力的になる。前述した“本気”とは演技に対する“本気”である。
素敵な彼氏的な柄本佑の新たな魅力も良いが、第9話では、ケイト尾高の仲を不倫だとして異常なまでの執着を見せた野中春樹(重岡大毅)に殺気に満ちた眼を向けたときが最高だった。やっぱりこういうダークなほうがいいかも。若手の重岡が柄本の芝居に刺激されてスリリングな場面になっていたのも良かったと思う。
妻子はいるが、ケイトを想う尾高。いまのところ不倫なわけだが、最終的にどうなるのか。最後はどんな表情を見せてくれるのか。『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)の佐藤健と並ぶ、最高に素敵な彼氏感を出してくれるだろうか。いずれにしても最後まで“本気”で挑むことは確信できる。
■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。
■放送情報
水曜ドラマ『知らなくていいコト』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、重岡大毅(ジャニーズWEST)、秋吉久美子、佐々木蔵之介、小林薫、本多力、小林きな子、和田聰宏、山内圭哉、関水渚、森田甘路、今井隆文ほか
脚本:大石静
演出:狩山俊輔、塚本連平ほか
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:小田玲奈、久保田充、大塚英治(ケイファクトリー)
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