喜美子と八郎、ハグの先にある壊して築く新たな関係 『スカーレット』一旦の最終回のような展開に

『スカーレット』一旦の最終回のような展開

 『スカーレット』(NHK総合)第20週「もういちど家族に」では、喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)が新しい関係を築く。

 2人の馴れ初めを振り返ると、始まりはとても初々しいものだった。朝夕2時間の陶芸の練習の中で、徐々に仲を深めていく喜美子と八郎。「川原さん」「十代田さん」の頑なな苗字呼び。それでいて、息のあった夫婦漫才のような掛け合いは、2人だけの温かな空気があった。

 その空気がだんだんと壊れ始めたのは、喜美子が八郎の才能を追い越し、穴窯に没頭し始めてから。家計も顧みずに窯焼きに巨額の資金を投げ入れる喜美子の熱狂に八郎はついていけなくなり、家を出て行く。喜美子は“男と女”の関係を諦め、女性陶芸家としての夢を選んだのだ。

 武志(伊藤健太郎)の言葉を通して喜美子が“大切なもの”を失ったことを痛感するシーンはあったが、最もそれを思い知らされるのは、亡くなったマツ(富田靖子)に手を合わせに八郎が家にやってきた際。お互い呼び方は「川原さん」「十代田さん」。しかし、出会った頃とは異なる固い空気が漂う。それが一瞬、和らいだのは喜美子が留守番電話に入れていた「ハックション」について八郎が聞いた瞬間。「ハックション」「違います」「フフ」。八郎を見送り、ガランとした川原家にあの頃の空気が戻ったことで、喜美子は忘れていた八郎への気持ちに気付き始める。

 人生の先輩である小池(烏丸せつこ)、そして誰よりも2人の仲を心配し続けていた武志の計らいもあり、喜美子、八郎、武志が川原家に揃う。「壊して進もうや。前に進むいうことは、作ったもんを壊しながら行くいうことや」。以前、八郎は喜美子のその言葉に「僕と喜美子はちゃうで。違う人間や」と返していた。八郎がずっと囚われていたのは、新人賞を獲得した大皿への執念。「強い覚悟と天賦の才能。真似しても同じもんはできひん」。八郎もまた、武志を通して喜美子を認め、あの頃の気持ちを取り戻していた。

 気恥ずかしさから真顔になりつつも、呼び方は「喜美子」「ハチさん」に。重々しい空気、意識し合っている雰囲気も、自然とない。武志の手を借り、八郎は大皿を木っ端微塵に壊し、前に進むことを決心する。「運命的な出会いをしたわけでも、劇的な瞬間があったわけでもなんでもない。気ぃ付いたら、自然と好きになってた」。八郎にとって陶芸の出会いは、喜美子との出会いにも似ている。「もう一回好きになりたい、純粋に」陶芸に対して、改めて向き合うことを誓う八郎は、同時に喜美子との新しい関係を築くことにもなる

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