『バッドボーイズ フォー・ライフ』はシリーズの転換点!? 成功した“引き算戦法”

『バッドボーイズ』成功した“引き算戦法”

 さて、ここまで散々“スケールダウン”という言葉を使ったが、それはあくまで“『バッドボーイズ2バッド』に比べて”という意味だ。今回も普通のアクション映画と比べれば、十分にド派手である。銃撃戦やカーアクションもさることながら、格闘アクションのキレ味はシリーズ随一だろう。監督を務めたのは、ベルギー出身のアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー。最初に書いた通り、このシリーズのツボはしっかり押さえているし、何より全編に漂うチャラさ加減も絶品だ。特にパーティーのシーンは白眉である。起用したミュージシャンは『アクアマン』(2018年)でTOTOの名曲「Africa」を超絶粗雑にサンプリングした名曲「Ocean To Ocean」を発表した前科を持つピットブル。彼の「Damn I Love Miami」という直球にも程がある曲が鳴り響き、脳ミソがすっかりマイアミになること請け合いだ。こうしたチャラさと後半からのシリアスさの使い分けも上手い。

 シリーズのツボを押さえつつ、上手くシリーズの方向性を修正する。ややホロ苦いドラマを見せながら、それでも最後の最後には「『バットボーイズ』を観た」と思わせるのは至難の業だ。しかし本作は、ウィルさんとマーティン・ローレンスの好演と、監督たちのバランス感覚で、この難しい仕事を見事に成し遂げている。シリーズに求めるものが(マイケル・ベイの狂気以外は)ちゃんとあって、しかもシリーズの今後が楽しみになる1本だ。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿し
ています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『バッドボーイズ フォー・ライフ』
全国ロードショー公開中
出演:ウィル・スミス、マーティン・ローレンス
監督:アディル・エル・アルビ、ビラル・ファラー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://badboys-movie.jp

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