小島秀夫、宇多丸らが『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』を絶賛 花沢健吾のオリジナルイラストも
2月14日公開の映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』に、著名人が絶賛コメントを寄せた。
『ソウル・キッチン』『女は二度決断する』のファティ・アキン監督最新作となる本作は、ドイツ・ハンブルクで1970年代に実際に起きた連続殺人事件の犯人フリッツ・ホンカについての物語を、同名のベストセラー小説をもとに描き出したスリラー。夜な夜な行きつけのバー「ゴールデン・グローブ」へやってきては、孤独な女性たちに近づいていた、一見無害で負け犬に見えるフリッツ・ホンカの姿を描く。
主演を務めたヨナス・ダスラーは、舞台を中心にドイツで活躍する新進気鋭の実力派若手俳優。初主演作『LOMO The Language of Many Others(英題)』と、今年5月に日本でも公開された『僕たちは希望という名の列車に乗った』でバイエルン映画賞新人賞を受賞。本作では、毎日特殊メイクに3時間かけて、折れ曲がった鼻、特徴的な斜視、極度に猫背のフリッツ・ホンカへと変身した。本作の活躍により、ヴァラエティ誌が選ぶ「注目すべきヨーロッパの若手映画人10人」にも選出されている。
本作にコメントを寄せたのは、ゲームクリエイターの小島秀夫、ラッパーでラジオパーソナリティも務める宇多丸(RHYMESTER)ら各界の著名人21名。漫画家の花沢健吾からは、コメントともにオリジナルイラストも寄せられている。
コメント一覧
小島秀夫(ゲームクリエイター)
冒頭5分でその残虐性に映画館を去る人もいるだろう。
ただ本作は、シリアルキラーを扱ったジャンル映画とは大きく異なる。
サイコロジカルホラーでありながらも、コメディであり、ドキュメンタリーであり、孤独な男のロマンス映画でもある。恐怖と哀愁、ブラックな笑いをギリギリのPOP感に閉じ込めた、これまでのファティ作品全部入りと言っても過言ではない、豊潤なる不埒な映画。
まるでファティ・アキンの熟成した“屋根裏”を覗くような体験だ。
ジョン・ウォーターズ(映画監督)
『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』は観るべき作品だ。
とてつもなくグロテスクで、ぞっとして、ウェルメイド!
この役を演じた勇気を称賛する。
作ったファティ・アキン、恥を知れ! 今年のベストに入れた自分も恥を知れ!
この映画を気に入ったって? そんなあなたも恥を知れ!
RHYMESTER 宇多丸(ラッパー・ラジオパーソナリティ)
弱者の鬱憤がさらなる弱者へと向かう、最低最悪の光景。それが延々、淡々と繰り広げられる。記憶にこびりつく哀しい顔たち肉体たち、そしてあの空間。その再現度にも驚く。(※11月28日発売『週刊文春エンタ!』より)
花沢健吾(漫画家)
何よりも女性たちの厳しい現実がこれでもかと映し出されるのが強烈。
『ジョーカー』に不満のある人はぜひ観てください。
杉本穂高(映画ライター)
こういう本当の意味で救い難い絶望を目の当たりにすると、ジョーカーすら生温く見えてくる。しかし、これこそ実話なのだ。
大島てる(事故物件サイト管理人)
・なぜ死体をバラバラにするのか?
・なぜ結局はバレるのか?
・被害者たちが犯人の家に上がってしまった理由は?
などなど、非モテ殺人男子の全てがわかる関わり合いになりたくないあなた必見の教科書的作品です。
柳下毅一郎(映画評論家・殺人評論家)
ホンカの憤怒さえ、醜くぎこちなく不器用だ。ファティ・アキン監督は、ロマンチックな殺人を徹底的に排除し、くそリアリズムでホンカの醜い生をえぐりだす。
鷲巣義明(映画文筆家)
臭いを強烈に感じさせる映画だ!
ホンカの屋根裏部屋に漂う異臭をはじめ、ホンカの体臭、死体を埋めた壁の中の腐臭、酒場に充満する酒臭さなど、臭いが生々しく伝わってくるから、殺人鬼ホンカが現実味をおびている!!
角由紀子(『TOCANA』編集長)
フリッツ・ホンカに興味が湧いたことはなかった。最低な意見だが、彼は頭のキレるサイコパスでもないし、殺された側も年増の名も無き娼婦だったからだ。
しかし、映画を観てのけ反った。
想像を絶する地獄、なんという人間味……私はなぜかゴミ屋敷に住む人に強い共感を覚えるのだが、それと同じ感覚で殺人鬼に共感させられた初の映画。開始5分、めちゃくちゃキツい。間違いなくNo.1殺人鬼映画。
吉田悠軌(怪談研究家)
社会のどん底で酒まみれに生きる、殺人鬼と被害者たち。そこでは殺人すら、だらしない。このだらしない地獄のおぞましさ。
レイナス(『ホラー通信』ライター)
なんだこりゃ!? 悲痛な事件を一切茶化してないのに、可笑しくて、切なくて、面白い!
フリッツ、君のような馬鹿者がいたことを一生忘れないぞ(泣)!
相沢梨紗(でんぱ組.inc)
暗澹たる澱みに引き寄せられた人々の末路と、彼の暴虐な日常の覗き見。劇場を出た瞬間、悪臭の移り香を感じた。
野水伊織(声優)
肉塊の如く絡み合いながらマウントを取り合うホンカと女たちのおぞましさよ。
自己を保ち生きるためならば、人はこれほど酷薄にもなれるのか。
饐えた臭いを嗅ぐ内に、観ているお前も同類だとこの地獄に引きずり込まれてしまったようだ。
小野一光(ノンフィクションライター)
その昔、取材先の紛争地で死臭を嗅いだ。
鼻をふさいだタオルには、現場を離れても吐き気をもよおす臭いが染みついていた。
フリッツ・ホンカの部屋にも同じ臭いが漂っていたに違いない。
だが彼は、そこで食べ、飲み、眠り、なにより女性を殺し続けた。
その事実にはただただ震撼する。
石井光太(作家)
登場人物全員が狂気を宿す映画は稀有だ。
だが、彼らがナチスの時代に育ったことを考えれば、単なる殺人映画ではなく、戦争が及ぼす永続的な狂気を描いた作品だと分かるだろう。
高橋ユキ(フリーライター/『つけびの村』著者)
酒を煽り、女を求め、殺す。
コンプレックスにまみれた欲望の火を、消すことすら考えず、繰り返す彼に、哀しくなる。
春日武彦(精神科医)
ホンカは銀幕の向こう側から、私たちを自分の同類と見做して親近感を覚えるだろう。映画が終わったら、手を振ってあげよう。
村井理子(翻訳家・エッセイスト)
あまりにリアルで残虐なシーンに戦慄する。
しかし何より怖いのは、このフリッツ・ホンカが、静かで無害な男に見えるという点だ。
全編にわたって美しい映像が続くが、それを堪能する余裕はない。
観客は、ホンカの孤独と狂気に冷静さを失うだろう。
主演のヨナス・ダスラーの怪演には一見の価値がある。
人間食べ食べカエル(人喰いツイッタラー)
徹底的にドライに描かれる、殺人鬼の狂気に満ちた日常。それは吐き気を催すほど強烈に不快。よくここまで地獄を煮詰めたと思う。
氏家譲寿/ナマニク(映画ライター)
希代の殺人鬼を最高の衝撃を持って描ききる。醜悪、卑劣、極悪、狡猾、粗略、滑稽。一体、なんなんだこいつは!?
共食いゾンビ(映画ライター)
フリッツ・ホンカという男の人柄を何処までも生々しく映し出し、画面から漂う腐臭や血生臭さは思わず鼻を覆いたくなるような気持ち悪さ。彼もまた一人の人間なのである……。
■公開情報
『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
2月14日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:ファティ・アキン
出演:ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼル、ハーク・ボーム
配給:ビターズ・エンド
2019年/110分/ドイツ/原題:Der Goldene Handschuh/英題:The Golden Glove
(c)2018bomberoint._WarnerBros.Ent. photo by Gordon Timpen