『カイジ』シリーズが見せた日本映画としての可能性 藤原竜也のテンション高い演技の凄まじさ

『カイジ』シリーズ、日本映画としての可能性

 近年の多くの日本の映画作品は、漠然とした社会批判を行っているとしても、このようにはっきりとターゲットや思想を明示した直接的な批判を避けてきたのではないだろうか。愚直とも思える表現が胸を打つのは、このようなストレートな言葉を誰もが言ってこなかったからではないだろうか。社会が自由にものを言えないような空気のなか、『カイジ』シリーズという、商業的な作品のど真ん中で、当たり前だが言いにくかったメッセージをぶち上げたという点については、評価せざるを得ないところがある。

 かつて大衆娯楽として隆盛をきわめたのが“映画”だ。しかし現在は、筆者も含めた増加する貧困層が快哉を叫べるような内容のものは少なく、表現する側が多方面の顔色を伺いながら、観客の方を向いていないのではないかと感じることも多い。その意味で本作は、映画というものを、本来の地点に立ち戻らせる可能性を見せてくれたといえる。そしてキンキンに冷えたビールに、ちっぽけで刹那的な幸せをしみじみと感じるカイジの表情を静止させることで、映画『カイジ』シリーズは、役割を正確に見出すことに成功したはずだ。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『カイジ ファイナルゲーム』
全国東宝系にて公開中
出演:藤原竜也、福士蒼汰、関水渚、新田真剣佑、吉田鋼太郎、松尾スズキ、生瀬勝久、天海祐希、山崎育三郎、前田公輝、瀬戸利樹、金田明夫、伊武雅刀
原作:『カイジ』(福本伸行/講談社ヤンマガKC刊)
監督:佐藤東弥
脚本:徳永友一
配給:東宝
(c)福本伸行 講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会
公式サイト:kaiji-final-game.jp

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