『グランメゾン東京』玉森裕太の繊細な演技はどう生まれた? 自身を鍛えた『リバース』演出家と再タッグ
それまではジャニーズの先輩のバーターか、主演だった彼が、達者な役者達が集うアウェイの場に脇役として参戦した意義は大きい。実はこの作品のときも、『グランメゾン東京』と同じく、キャストが発表された時点ではアイドルである彼の出演に対して少々意地悪な反応がネットなどで見られた。
しかし、放送が始まるや、そうした声は以下のような称賛に変わっていったのだ。
「演技でこんなに変わるの? アイドルらしからぬ演技力に驚きました」
「俳優かと思ってた」
「藤原竜也はさすがのうまさだけど、メインの5人が全員良い。(失礼ながら玉森くんが意外にも適役)」
「浅見先生もよかったなー。あまり表情に変化はないけど心中の動揺とかしっかり伝わってくる。ジャニーズwとか最初思ってしまってごめんなさい」
実は今年、1月9日放送のラジオ『Kis-My-Ft2 キスマイRadio』(文化放送)において、過酷だったドラマ撮影の裏話が話題になったときがあった。そこで玉森が「一番追い込まれた作品」として答えたのが、『リバース』であった。
「お話もだし、監督も優しい監督ではなかったから。もう追い込まれて、俺が死んじゃうんじゃないかな? と思った。友人が死ぬ話だったけど」
玉森は日頃、過去についてあまり語らないうえ、弱音を吐くことも少ないタイプであるだけに、塚原監督のもとで鍛えられた経験は、役者として非常に大きなものだったのだろう。
さらに今回、公式HPのインタビューでは、塚原監督についてこう語っている。
「僕は怖いイメージがあります。単純に怖いというのではなく、緻密な演出をつけてくださったり、映るか映っていないか、わからないくらいの奥のほうのエキストラさんにも演出を付けていたりと、本当に繊細にアンテナを張られている方だと思います」
塚原監督の『中学聖日記』(TBS系)で鮮烈なデビューを果たした岡田健史も、過去のインタビューで「演出のきめ細やかさについては、監督自身が『他の監督は私ほどグチグチ言いません。でも私はこだわるんです』とおっしゃるんですが、作品に対する集中力や情熱がとにかく素晴らしいんです」と語っていたことがある(洋泉社『CLUSTER』)。
一見穏やかな水面のような雰囲気を漂わす玉森裕太。『グランメゾン東京』で見せる平古もまた、決して大きなアクションではなく、抑えた表現の中から、焦りや怒り、喜び、羞恥心やプライドをのぞかせる。彼は本作で何度も涙を流し、チームに合流した際には少年のように泣きじゃくっているが、その「涙」の表現の細やかさだけでも、振り返るに値するのではないだろうか。
■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。
■放送情報
日曜劇場『グランメゾン東京』
TBS系にて、12月29日(日)21:00~22:24放送
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太(Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、及川光博、 沢村一樹、吉谷彩子、中村アン
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子ほか
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/