年末企画:折田侑駿の「2019年 年間ベスト俳優TOP10」 原作キャラの“再現”にとどまらない熱量

折田侑駿の「2019年俳優TOP10」

柳楽優弥 (c)2019「泣くな赤鬼」製作委員会

 さらに“ベテラン枠”でいえば、柳楽優弥の凄みが圧倒的だった。静かな演技に激情を滲ませた主演映画『夜明け』にはじまり、『泣くな赤鬼』『ザ・ファブル』とメインキャストとして出演した作品が立て続けに公開。とくに後者の二作は同時期に公開されたこともあり、その演技の振れ幅に感嘆の声を禁じ得ずといったところ。五年ぶりに主演を務めた舞台『CITY』では、現代演劇の最前線にも立ってみせた。そして、この『CITY』に出演した宮沢氷魚の活躍にも目を見張るものがある。『映画 賭ケグルイ』で映画初出演を果たし、『偽装不倫』(日本テレビ系)ではプライムタイムの連ドラでヒロインの相手役という大役を務めた。いわゆる大抜擢ではあるが、よくよく考えてみてほしい。彼はまだ俳優デビューをしてから二年ほどしか経っていないのだ。この飛躍ぶりは、一段飛ばしどころか、三段飛ばし、いや五段飛ばしの所業。しかし先述した『CITY』の演出家であるマームとジプシーの藤田貴大から、昨年の『BOAT』に続いて起用されている事実や、来年公開の主演映画『his』を観れば、いろいろと納得である。

宮沢氷魚 (c)2020映画「his」製作委員会

 そんな、一気に存在感を示した俳優といえば、ほかに清原翔が挙げられる。ドラマ作品に多く顔を見せながら、『なつぞら』で知名度は急上昇。映画も『PRINCE OF LEGEND』『うちの執事が言うことには』『HiGH&LOW THE WORST』と話題作が次々に公開されたが、いずれも清原のクールでミステリアスな佇まいありきの役どころに収まっている印象だった。滑らかで美しい発声ができる俳優でもあるのだから、来年はより適役に恵まれることは間違いないだろう。

 そして存在感について言及するのなら外せないのが笠松将だ。彼の顔と名前は、今年多くの方に強く印象づけられたのではないだろうか。なにをしでかすか分からない不敵な佇まいで私たちの恐怖と興味を煽り、どんな役どころであっても、彼が登場するとワクワクしてしまう。ドラマに映画にと出演作があまりに多く、すでに彼の実態をつかむことは難しそうだが、きたる2020年にはさらなる接近を試みたい。年明けすぐに公開の主演作『花と雨』は、笠松のポテンシャルが存分に活きた、映画と彼の存在がケミストリーを起こしている作品なので要チェックだ。

笠松将 (c)2019「花と雨」製作委員会

 最後に、ここはギリギリまで迷ったところだが、サトウヒロキの名を挙げたい。まだ彼のことを知らない方も多いだろう。筆者もこれまでに彼の出演作を観たのは、ショートムービーのいくつか程度であった。しかしこの12月に滑り込みで観ることが叶った彼の主演作『ゆうなぎ』(「MOOSIC LAB 2019」のプログラム内にて上映)での好演を見て、サトウに決めた。画面内の彼の顔を見ていると、なにか言いたくなる。なにか言葉を与えたくなる。つまり、言葉を誘発する顔なのだ。ときにその表情だけで観客の視線を受け止めなければならないスクリーンの中の彼らにとって、これは非常に重要な要素であるように思う。もちろん、“演じる”ということができる前提でだ。本作が来年一般公開されることを願いたい。

 どの俳優もさらに実を大きくさせた2019年。新たなフェーズに突入する2020年に、彼らはどんな世界を見せてくれるのだろうか。彼らがいるのなら、不安と期待が入り交じる未来も、期待の方が勝りそうである。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■リリース情報
『惡の華』
発売日:2020年3月3日(火)
価格:豪華版 Blu-ray(BIXJ-0321)8,800円 (税抜) 
   豪華版 DVD(BIBJ-3392)7,800円 (税抜) 
   通常版 Blu-ray(BIXJ-0320)4,800円 (税抜)
   通常版 DVD(BIBJ-3391)3,900円 (税抜)
発売・販売元:株式会社ハピネット

【豪華版の特典内容】
<外装・封入特典>
・押見修造描きおろし三方背BOX&デジスタック仕様
・ポストカード8枚セット
<映像特典>
DISC1:特報・予告・TVスポット・WEB限定スポット(2種)
DISC3:ビジュアルコメンタリー(伊藤健太郎×玉城ティナ×監督:井口昇)
DISC4:メイキング・イベント映像
<音声特典>
DISC2:オーディオコメンタリー(原作:押見修造×監督:井口昇)

※豪華版は4枚組となり、 下記構成となります。
DISC1:『惡の華』
DISC2:『惡の華+』
DISC3:『惡の華』ビジュアルコメンタリー
DISC4:メイキング、 イベント映像集

監督:井口昇
脚本:岡田麿里
原作:押見修造『惡の華』(講談社刊)
出演:伊藤健太郎、玉城ティナ、秋田汐梨、飯豊まりえ 
製作プロダクション:角川大映スタジオ
(c)押見修造/講談社 (c)2019映画『惡の華』製作委員会
公式サイト:akunohana-movie.jp

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