『警視庁・捜査一課長』は“お約束の展開”がたまらない!? テレ朝刑事ドラマファン必見のキャスティングも

「遊び心」豊かな『警視庁・捜査一課長』

 キャスティングにも遊び心が秘められている。テレ朝刑事ドラマファンにとって最も楽しいのは、『科捜研の女』との“立場逆転キャスティング”だ。大岩の片腕ともいうべき存在の小山田大介管理官役の金田明夫は、内藤同様『科捜研の女』のレギュラーメンバーでもある。『警視庁・捜査一課長』では内藤が金田の上司役だが、『科捜研の女』では金田が刑事部長・藤倉甚一役で、内藤演じる土門の上司にあたり、2つのドラマの間で立場が逆転しているのだ。

 同様の構図は他のキャストでも起こっており、10月放送のスペシャルで、捜査一課長より立場が上のエリート官僚・白馬應治役として出演した石井一彰は、『科捜研の女』では内藤演じる土門の部下・蒲原勇樹として出演している。また、これまで数回登場している交番勤務の巡査・本淵陽役の西田健は、『科捜研の女』では内藤や金田の上司にあたる京都府警察本部長・佐伯志信役だ。本淵陽(ほんぶちよう)という役名も「本部長」から来ていることがうかがえる。

 そして何と言っても、レギュラーメンバーによる「お約束の展開」がファンにはたまらない。中でも刑事部長の笹川健志(本田博太郎)は、物語の中盤で大岩を叱咤激励し、事件解決後に再び登場して「ベリーグッドです」という決めゼリフで大岩を労うのだが、この笹川のキャラクターがかなりの変わり者だ。本田がクセのある演技で、「笹川刑事部長のコーナー」と呼びたくなるような独壇場を見せる。子育てのためにしばらく捜査一課から離れていたことから大岩に「ブランク」と呼ばれている奥野のことを、笹川はわざとらしく「スランプ」や「トランクス」と言い間違えるなど茶目っ気たっぷりな面も見せている。そして大岩たちが笹川との受け答えを笑わず真面目腐ってやっているのもお決まりで、それが更におかしみを誘う。

 笹川刑事部長と同様に、中盤とラストに登場する大岩の妻・小春(床嶋佳子)と大岩家の飼い猫のビビの存在も忘れてはならない。激務の大岩を温かく支える小春と、可愛らしい姿やしぐさを見せるビビは、このドラマの中で重要な癒しになっている。

 おなじみのパターンに視聴者は「待ってました」と喜び、ベタなギャグの数々にツッコミを入れつつ笑い、最後には事件が解決して大団円。『警視庁・捜査一課長』シリーズのお約束の展開は、『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』といった人気時代劇に通じるところがあるように思う。『警視庁・捜査一課長』は刑事ドラマ界の時代劇のような路線を歩んでいるのではないだろうか。そして、安心して楽しめる刑事ドラマを求めている層のニーズにぴったりはまったことが、人気シリーズとなったゆえんだろう。

 15日のスペシャルでは、いつもの“お約束”の中でどのようなストーリーが展開されるのか。放送を楽しみに待ちたい。

■久田絢子
フリーライター。新聞ライター兼編集(舞台担当)→俳優マネージャー→劇場広報→能楽関連お手伝い、と舞台業界を渡り歩き現在に至る。ウェブ「エンタメ特化型情報メディアSPICE」等で舞台・音楽などのエンタメ関連記事を中心に執筆中。

■放送情報
『警視庁・捜査一課長 スペシャル』
テレビ朝日系にて2019年12月15日(日) よる9:00より放送
キャスト:内藤剛志、宮崎美子、とよた真帆、大久保佳代子、尾美としのり、朝日奈央、遠藤久美子、堀家一希、大堀こういち、渡辺裕之、本田博太郎、矢野浩二、鈴木裕樹、塙宣之(ナイツ)、床嶋佳子、金田明夫
脚本:深沢正樹
音楽:山本清香
監督:濱龍也
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:秋山貴人(テレビ朝日)、島田薫(東映)
制作:テレビ朝日、東映
(c)テレビ朝日

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