『まだ結婚できない男』前作とは異なるヒロイン像 桑野と向き合う吉田羊は、女性の強い味方?
『結婚できない男』から女性キャストが一新した『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)。その中でヒロイン的役割を果たしているのが吉田羊だ。本日12月10日に最終回を迎える前に、吉田が『結婚できない男』シリーズにもたらした新たな魅力や、阿部寛との印象的なやり取り、そして最後に桑野との今後に繋がる接近はあるのか、考察してみたい。
『結婚できない男』から13年ぶりの続編『まだ結婚できない男』は、53歳となった阿部寛演じる桑野信介が相変わらず偏屈で独り身を謳歌する日々を送っている。53年間独身を貫き通してきた桑野が今回こそ結婚するのか? というのがドラマの表向きのテーマであるが、桑野と同じく結婚できない女性陣たちの固定概念と建前を桑野がいかに崩していくのかが今シリーズの本当の面白さだと考える。前作で桑野が最後に告白をした夏川結衣演じる早坂夏美に代わり、今シリーズのヒロインとなっているのが吉田羊演じる弁護士の吉山まどか。前作では、桑野が独身の女医である夏美に何かと相談や会話をしたいがために通院し恋愛に発展するというものだったが、今回のまどかは、桑野から中傷ブログに関する相談を受けたことから関係が始まり、何かと弁護士への相談という建前で掛け合いが繰り広げられ、桑野に振り回されていく。
吉田はこれまで強い女性の役を演じることが多く、ドライなイメージのある役者なだけに、桑野の一言に突き崩されるインパクトは絶大だ。そして吉田がまどかの役としてだけではなく、女性の代表として真っ向から“結婚できない男”桑野の意見を受けて止めているようにも思え、役者としての器量を感じる。また、弁護士という普段は強くてしっかりしている存在が、桑野に触れたことで、周りに気を使い、本心とは裏腹な不器用さが出てくる面白さも前作から引き継がれている。桑野が隣人の女優とのスキャンダル写真を撮られて「泣き寝入りですか?」と桑野が言うと「ご愁傷様です」と言ったり、「お役に立てて何よりです」と一言で切り返す時の演技が、夏美を意識したかのようで懐かしさを感じさせる。
ドラマの世界観が変わると旧作ファンは寂しい思いをするものだが、まどかという存在がいることで、前作と同じドラマのフォーマットとしては変わらず「桑野は相変わらずやってるなー」と続編として安心して楽しめるようになった。今回は13年後ということもあり、桑野がいかに変わっていないか、または変わったのか、まどかとの丁々発止のやり取りで視聴者に伝える大きな役割を見事に担っているが、それには阿部寛の濃い演技を受け止める吉田の演技力があってこそ。