『G線上のあなたと私』波瑠×中川大志の恋に漂う切なさ ヒット続く「年下男子との恋愛」と一線を画す理由

『G線上のあなたと私』波瑠×中川大志の恋に漂う切なさ ヒット続く「年下男子との恋愛」と一線を画す理由

今や「年下男子」は恋愛ドラマの鉄板ジャンルに

 恋愛ドラマ冬の時代と言われて久しい昨今で、佳作続きなのが「年下男子とのラブストーリー」。この1年あまりの間でも『恋のツキ』(テレビ東京系)、『中学聖日記』(TBS系)、『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)と話題作が相次ぎ、“イコくん”こと神尾楓珠、“黒岩くん”こと岡田健史、そして“ゆりゆり”こと横浜流星と次世代を担う若手俳優を輩出している。

 この勢いに続くのが、現在放送中の『G線上のあなたと私』(TBS系)だ。アラサー女子、イマドキ大学生、専業主婦という世代もコミュニティも違う3人が大人のバイオリン教室を通じて友情を温め合う前半戦から、折り返し地点を曲がって恋のアクセルが急加速。主人公の小暮也映子(波瑠)が、8歳も年下の加瀬理人(中川大志)にドギマギする姿をチャーミングに描き、共感を集めている。

 SNS上でも理人のツンデレな魅力にギャップ萌えするユーザーの声が続出。なぜ「年下男子とのラブストーリー」はこんなにも観る人を夢中にさせるのだろうか。

 古今東西、「年下男子とのラブストーリー」は名作が多い。その原点にして最高峰と言えば、木村拓哉&山口智子の『ロングバケーション』(フジテレビ系)。数々の社会現象を巻き起こした恋愛ドラマの金字塔だ。その後も、小雪&松本潤の『きみはペット』(TBS系)、篠原涼子&赤西仁の『anego』(日本テレビ系)、篠原涼子&三浦春馬の『ラスト♡シンデレラ』(フジテレビ系)、綾瀬はるか&福士蒼汰の『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)などタイトルを挙げただけで心浮き立つ人気作がズラリ。

 「年下男子とのラブストーリー」にときめくのは、それがわかりやすいファンタジーだから。『G線上のあなたと私』の第7話で也映子自ら「8歳も年下のキラキラした男子に付き合ってくれとか言われるのって、もう完全に痛い妄想か、ファンタジーの世界じゃないですか」と語っている通り、現実ではそう起こりえない話。だからこそ、心ゆくまで夢を見ていられる。また、年齢という枷があることで自分の気持ちに素直になれなかったり、年の差を引け目に身を引いたり、ドラマに盛り上がりをつくれるのも、視聴者を惹きつけるポイントのひとつだ。

他の誰かに向けられたまなざしが、恋をせつなくさせる

 そんな中での『G線上のあなたと私』だが、本作は『恋のツキ』、『中学聖日記』、『初めて恋をした日に読む話』と続いた「年下男子とのラブストーリー」とはまたちょっと趣が異なる。なぜなら、前述の3作はいずれも年下男子から主人公に対して恋のまなざしが向けられていた。イコくんも、黒岩くんも、ゆりゆりも、一途にヒロインを想い続け、若さたっぷりのストレートな愛情表現が視聴者に「私もこんなふうに愛されたい」という憧れをもたらしてくれた。

 けれど、理人は違う。理人の恋のまなざしは、バイオリン教室の講師であり、実兄の元婚約者である久住眞於(桜井ユキ)に向けられていた。也映子は、望みの薄い理人の恋を最初は半分茶化しながらも応援する立場だったが、いつしか理人のまなざしが自分に向けられていないことに寂しさを覚えていく。

 この構図は、むしろ『ロングバケーション』の瀬名秀俊(木村拓哉)と葉山南(山口智子)に近い。結婚式当日に花婿に逃げられた南と、後輩の奥沢涼子(松たか子)に届かぬ恋をしている瀬名。軽口を叩き、時に喧嘩をしながらも、瀬名の片想いを応援していた南は、やがて自分も瀬名に恋心を抱いていることに気づく。

 『G線上のあなたと私』も同様だ。眞於に付き合おうとしている人がいると聞いて頭を抱える理人は、全然也映子のことなんて見ていない。自分と眞於のことでいっぱいいっぱいだ。也映子の誕生日がいつかなんて知りもしない。けれど、眞於の誕生日には欠かさずお祝いメッセージを送るマメさを持ち合わせている。その事実を知り、也映子はショックを隠せない。これが、相手が年上なら也映子ももっと甘えられたのかもしれない。同世代ならワガママも言えたのかもしれない。でも、年下には無理だ。「寂しい」とか「私のことも見てほしい」なんてみっともなくて言えるはずがない。だって、こっちは大人なんだから。

 でも理人は、何気ないひと言で也映子が誕生日を迎えたことに気づいてくれた。そして、弓に塗るための松脂を買ってくれた。「ちょうどなくなりかけてたし」と喜ぶ也映子に、「知ってた」と言う理人。そのあとの「嘘」が本当なのか、照れ隠しなのかはわからない。でも、也映子には十分だった。誰も自分のことなんて見てくれていないと落ち込んでいた也映子にとっては、そんな些細なことを理人が見てくれていたのかもしれないと思えただけで十分だった。そして気づくのだ、誰でもいいから見てほしいんじゃない。理人に自分のことを見てほしいのだ、と――。

 『G線上のあなたと私』は、「あなた」が「私」ではなく「あの人」を見つめるせつなさを描いたドラマだ。

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