戸田恵梨香が看取った北村一輝の最期 『スカーレット』父親が示した最大の愛

『スカーレット』北村一輝の最期 

 家族みんなで絵付けをした皿が焼きあがる。その頃、信作(林遣都)の家では忠信(マギー)が常治(北村一輝)の思い出話をしながら酒を飲んでいた。忠信は「美味しい松茸ご飯を食べさせる」という常治との約束を守れなかったと嘆いた。すると信作が立ち上がる。連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第75話では、「愛いっぱいの器」が常治を励ます様子が描かれる。

 忠信と信作で採ってきた松茸と陽子(財前直見)の用意した米を持って川原家に飛び込んできた大野家。約束を果たすと意気込み、釜いっぱいに松茸ご飯を作った。そのご飯を喜美子(戸田恵梨香)らは、絵付けした皿いっぱいに盛り付ける。食欲のない常治を喜ばせるため、大盛りの松茸ご飯を家族みんなで常治に差し出した。カラフルな大皿を見せ、みんなで焼いた皿だと常治に話す喜美子。しかし常治は、ご飯で皿が見えないと力なく笑う。慌ててみんなでご飯を平らげる。皿を見た常治は、震える手で愛しそうに皿を撫でた。

 常治は意地と誇りの人だった。お金もないのに見ず知らずの男を居候させたり、自分の勝手で喜美子を大阪に送り出したり、果ては呼び戻したりした。酒ばかり飲んで借金もして、どうしようもない父親だった。しかし、それでも常治は家族が大好きで、これ以上もない愛情をかけてきたことは明白である。減らず口を叩きながら、いつだって家族のことを真剣に想っていた。そして一番は、長女の喜美子に頼りながらも、その幸せを心から願っていたのだ。

 そんな喜美子に対して常治は最後に「喜美子、頭になんかついてる」と喜美子を自分の元に呼びつける。そしてそっと払うふりをして喜美子の頭を撫でた。そして「ほな、またな」と言って目をつむってしまった。喜美子は慌てて「寝んといて」と常治を起こそうとし、初めて家族で琵琶湖に言った日の話をした。しかし常治はそのまま、目覚めることなく逝ってしまった。今まで喜美子の肩に乗っていた様々な重圧を労うように、そして最大の愛を示すように喜美子の頭を包んだ常治の手は、がっしりと大きく、まさしく“父の手”であった。常治の死で、一家の大黒柱を失ってしまった川原家。涙にくれる喜美子らはどう乗り越えていくのだろうか。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
NHK総合にて、2019年9月30日(月)〜2020年3月放送予定
出演:戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、松下洸平、桜庭ななみ、福田麻由子、マギーほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記
演出:中島由貴、佐藤譲
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/

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