米エンタメ界で議論を呼ぶ「映画とTV」の関係 クリエイターの流入と所得格差の深刻化

 2019年の「フィルムとTVの関係」を表す一つの出来事が、「TV史上初のグローバル・ブロックバスター」と評された『ゲーム・オブ・スローンズ』ショーランナーの動向かもしれない。「上位1%」に位置する彼らは、発表されていた『スター・ウォーズ』新作製作をキャンセルした。ファンからのバッシングを忌避した噂もあるが、表向きの理由は「Netflixプロジェクトとの同時進行は不可能と判断した」ためである。ここで重要なのは、劇場ブロックバスターの象徴である『スター・ウォーズ』よりもストリーミング作品を優先する選択自体はサプライズとして受け止められなかったことではなかろうか。かつては「劇場映画の下位」のように扱われていたTVのパワー拡大を表す事象だ。一方、初期Netflixを代表する長寿シリーズ『ボージャック・ホースマン』クリエイター、ラファエル・ボブ・ワクスバーグの告白も注目に値する。前記事で紹介した『トゥカ&バーティー』打ち切り騒動について、彼はNetflixが「視聴者数を即座に獲得できない新作にチャンスを与えて育てる方針」を捨てた結果だと考えており、その転換を「恥ずべきこと」だと批判したのだ。主要ストリーミング・サービスすらIP/スター偏重にシフトしつつある状況を踏まえて、多種多様な作品を輩出する「Peak TV」時代の終焉を予期する声も挙がっている。

■辰巳JUNK
ポップカルチャー・ウォッチャー。主にアメリカ周辺のセレブリティ、音楽、映画、ドラマなど。 雑誌『GINZA』、webメディア等で執筆。
ブログ:http://outception.hateblo.jp/
ツイッター:https://twitter.com/ttmjunk

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