『ダウントン・アビー』と『エルカミーノ』は、劇場映画産業の“救世主”と“天敵”に?

 ハリウッドお決まりヒット映画といえばなんだろう? スターが参加するSF大作に、栄華を誇るアクション・シリーズ……2019年9月の全米興行で言えば、ブラッド・ピット主演『アド・アストラ』、そしてシルベスター・スタローン主演『ランボー:ラスト・ブラッド』だ。しかしながら、これらスター男優映画は、揃って「おばあちゃんファンを抱える牧歌的作品」に敗れ去ることとなる。同週公開された人気TVドラマシリーズの劇場版『ダウントン・アビー』が予想を上回るかたちでボックス・オフィスの頂点におどり出たのだ。翌月には、 今なおつづくドラマ黄金期「Peak TV」の礎となった『ブレイキング・バッド』シリーズの続編映画『エルカミーノ』がNetflixにリリースされる。もしかしたら、変革の秋を騒がせる2つのTVベース・ムービーは、対極にあるかもしれない。ひとつは劇場映画産業のかもしれないからだ。

「スタジオ幹部たちは、間違いなく『ダウントン・アビー』の成功に注意をはらっている」(Box Officeアナリスト ジェフ・ボック、IndieWireより)

 2010年に英国で初演されたドラマ『ダウントン・アビー』が世界的メガヒットになるとは、複数の専門家どころか、米国放送を担当したPBSすら予想していなかったという。1900年代初頭のイギリス貴族を描いたこの時代劇は、モダンな視点で描かれていたとはいえ、当時流行していた『ブレイキング・バッド』『マッドメン』と比べれば、ノスタルジックで牧歌的だったからだ。プロフェッショナルの予想がはずれたことは、PBS史上最高レーティング・ドラマ作品記録樹立、および15個ものエミー賞トロフィーが示しているのだが。

 2015年にシーズン6で最終回を迎えた『ダウントン・アビー』は、4年の期間をあけて、今度は劇場映画業界にサプライズを巻き起こす。前述したように、2019年9月第3週の全米興行収入にて、同週デビューのブラッド・ピット主演大作および『ランボー』フランチャイズ新作を引き離すかたちで首位デビューを飾ったのだ。

2019年9月20-22日 週末興行収入(Box Officeより)

1位 『ダウントン・アビー』 約3,100万ドル/推定製作費2,000万ドル
2位 『アド・アストラ』 約1.900万ドル/推定製作費1億ドル
3位 『ランボー:ラスト・ブラッド』 約1,890万ドル/推定製作費5,000万ドル

 劇場版『ダウントン・アビー』は、中規模予算作品でありながらハリウッド・スター主演大作に差をつけたばかりか、マーケター予想を大きく上回る想定以上のスマッシュ・ヒットを記録した。客層は74%が女性、さらには全体の3割以上が55歳以上(Deadline参照)。中高年女性を中心に、アクション大作映画を観に来ない層も引き込んだかたちとされる。人気キャラクターを集結させるファン・フレンドリー構成にもかかわらず初見の人も楽しめる仕上がりようで、映画自体の評判も悪くない。すでに3つのエミー賞を手にする公爵夫人役デイム・マギー・スミスのアカデミー賞ノミネートも期待されている。

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