『冴えない彼女の育てかた Fine』が描く創作活動の熱意 妄想にまみれた中に見える確かな現実

『冴えない彼女の育てかた Fine』が描く創作活動の熱意 妄想にまみれた中に見える確かな現実

 また、倫也は自分の書くシナリオに行き詰まった際、作中世界のトップクリエイターである人物に、「キモいまま突き進め、お前の書くキモいシナリオに真のキモオタはついてくる」と、辛辣でありながらも愛に溢れたアドバイスを受ける。パンフレットにも書かれているように倫也は丸戸自身を反映させているキャラクターだが、同時にこれからクリエイターを志望する若者たちへのエールにも受け取れる。一つひとつの描写にはフィクションというよりも、ゲーム制作現場のドキュメントを見ているようかのような、魂の込もったやり取りが描かれている。

 本作は恋愛描写とクリエイター論を交互に展開しながらも、残酷な現実も突きつける。倫也に認められたいがために、技術を磨いてきた英梨々たちは、その能力を必要とされているものの、最も欲しい愛を得ることができない苦悩が待ち受けている。しかし、そこに救いもある。英梨々たちも作家としての自分たちを愛してくれた倫也への思いを抱きながら、クリエイターである自分たちの後ろにしがみついてでもついてくると信じて、まっすぐに前を見つめて歩く。クリエイターが作品を発表するために努力を重ねるからこそファンは応援し、ファンの応援があるからこそクリエイターも新しい物語を紡げる。そしてファンの中から新しいクリエイターが生まれ、やがて自分たちに追いつくことを期待しながらさらなる高みを目指してまい進する。そこにはファンと創作者の理想的な関係を見ているようだった。

 2020年に新作映画が公開される『SHIROBAKO』や『カメラを止めるな!』など、近年はクリエイターの苦悩とやりがいを描いた作品がヒットしているが、本作はそれらの作品と同等の熱量を感じるはずだ。メインビジュアルなどから、いかにもアニメオタクが好きそうな美少女ハーレムアニメに見えるかもしれないが、その内容は真っ当な恋愛作品であり、クリエイター讃歌である。ハーレムアニメにありがちな“現実離れした妄想”ではなく“妄想まみれでも、確かな現実”と、大志を抱いた若きクリエイターの強固な意思により、チャンスを待たず未来を切り開く姿を描いた作品として最大級の賛辞を送りたい。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。
@monogatarukame

■公開情報
『冴えない彼女の育てかた Fine』
現在公開中
声の出演:松岡禎丞、安野希世乃、大西沙織、茅野愛衣、矢作紗友里、赤﨑千夏、柿原徹也
原作・脚本:丸戸史明(ファンタジア文庫/株式会社 KADOKAWA)
キャラクター原案:深崎暮人
総監督:亀井幹太
監督:柴田彰久
キャラクターデザイン:高瀬智章
制作:CloverWorks
主題歌:「glory days」春奈るな
配給:アニプレックス
(C) 2019 丸戸史明・深崎暮人・KADOKAWA ファンタジア文庫刊/映画も冴えない製作委員会
公式サイト:https://saenai-movie.com
公式Twitter:@saenai_heroine

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