日本のダークヒーロー“鬼”がモチーフに!? 『HUMAN LOST 人間失格』キャラクターデザインの背景

日本のダークヒーロー“鬼”がモチーフに!? 『HUMAN LOST 人間失格』キャラクターデザインの背景

 11月29日公開のアニメーション映画『HUMAN LOST 人間失格』の業界人トーク付き先行試写会が11月11日に都内で開催され、監督の木崎文智、キャラクターデザインのコザキユースケ、企画・プロデュースの株式会社スロウカーブ、クリエイティブ・プロデューサーの橋本太知、脚本家・評論家の堺三保が登壇した。

 本作は太宰治の『人間失格』を屈指のクリエイター陣が再構築したオリジナルアニメーション映画。医療革命により死を克服した昭和111年の東京を舞台に、体内のナノマシンをネットワーク管理する究極の社会システム“S.H.E.L.L.”(シェル)体制によって生かされる人々を描く。文明の再生と崩壊の二つの可能性の間で大きく揺れ動く日本で、薬物に溺れ怠惰な暮らしを送る大庭葉蔵は、謎の男・堀木正雄とともに、特権階級の住まう環状7号線内(インサイド)への突貫に参加し、激しい闘争に巻き込まれる。

 試写が終わり、木崎監督が「楽しんでいただけましたでしょうか?」と問いかけると、会場は大きな拍手に包まれた。堺は本作を観た感想を「今、流行っている映画『ジョーカー』に現代的なテーマ性ということではすごく近い。主人公が異形のヒーローなのか、アンチヒーローなのか。そういった点では、アメコミの中でも、ヴェノム、スポーンに非常に近い。アメコミ映画の日本版と古典文学の人間失格がうまく繋がったということですよね」とコメント。

 企画の発端について、橋本は「オフィシャルな言い方になりますが、単純に太宰の『人間失格』はよくよく読んでみると、とても現代的で、アニメでよく扱っている題材です。言葉を選ばなければ、20年前から流行っている“世界系”と呼ばれるものと扱っているテーマはほぼ同じなんじゃないかなというのが一番根底にあります」と解説。すると、アメコミっぽい影響があったのかという質問に、コザキが「企画書を見たときは、サイバーパンクの雰囲気でダークヒーローものでした。僕が入る前には、みんなのイメージとしてバトルスーツを着たかっこいいものというイメージがあったと思います。でも、そういうものはすでに作品としてある。『日本でダークヒーローってなんだろうね』ってところから“鬼”のモチーフが出てきました。ただ、ウィングマンとかのカッコいい系にしてもインパクトはないので、ちょっと気持ち悪くしてみよう、ということであの形になりました。僕の引き出しは大体アメコミなので、アメコミっぽくなったのはそこが理由かと思います(笑)」と回答した。

 再び『ジョーカー』との共通点の話題になると、木崎監督は「テーマは似ていると思う。格差社会、閉塞感、そこで暴走する市民。『HUMAN LOST』と近しいテーマを持っていると思います」とコメント。堺は「年が上の人の怨念の話という点が共通点かな? アメコミってYear ofヴィランって呼ばれるほど、DC系はダークになっています。世の中の閉塞感が、そのままエンターテインメントに反映していると思います」と説明し、「ジョーカー、ヴェノム。80年代爆発的な人気が出た、その辺に回帰している気がする」とコメント。橋本は「世の中が暗いってことなのかもしれない。単純に正義を信じられなくなっている感じがする。アンチヒーローの時代ではあるものの、『HUMAN LOST』はそこを意識して作ったわけではない」と明かした。コザキも木崎監督もアメコミ好きなのに、あえてそれを作品に出していないことについて、木崎監督は、「今作では、ポリゴンさんが、普段僕がやっている雰囲気のテイストを出してくれたのだと思います」とコメント。コザキは「僕は、国境のないデザインや絵柄を目指しているので、『HUMAN LOST』も国境を感じないものには仕上がっていると思います」と語った。

 最後に、木崎監督は「この作品で発明があったとしたら、古典部学とSFの融合だと思っています。原作のエッセンスを活かして、ここまでやれた作品は今までなかったです。冲方さんとは、今回これができたのであれば、次は『吾輩は猫である』をやりたいよね、なんて話もしています(笑)。気楽に楽しんでいただきたいです」と笑顔を浮かべ、トークイベントは幕を閉じた。

※大庭葉藏のぞうは旧字体が正式表記。
※木崎文智の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■公開情報
『HUMAN LOST 人間失格』
11月29日(金)公開
声の出演:宮野真守、花澤香菜、櫻井孝宏、福山潤、松田健一郎、小山力也、沢城みゆき、千菅春香
原案:太宰治『人間失格』より
スーパーバイザー:本広克行
監督:木崎文智
ストーリー原案・脚本:冲方丁
キャラクターデザイン:コザキユースケ
コンセプトアート:富安健一郎(INEI)
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
企画・プロデュース:MAGNET/スロウカーブ
配給:東宝映像事業部
(c)2019 HUMAN LOST Project
公式サイト:human-lost.jp
公式Twitter:@HUMANLOST_PR

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