『グランメゾン東京』木村拓哉の才能に惹かれる仲間たち 日曜劇場の定番“融資”を巡るエピソードも

『グランメゾン東京』は“視覚で味わう”ドラマに

 自由気ままに振る舞い、軋轢を生む尾花は周囲の人間にとっては迷惑な存在でしかない。過去の失敗について一切言い訳をしないことも誤解を生む要因になる。そんな尾花に倫子(鈴木京香)は文字通り献身的なサポートをする。もしグランメンゾン東京が失敗すれば、倫子は最大の犠牲者になってしまうのだが、倫子がなぜここまでして夢に賭けるのか。現段階では、それはひとえに尾花の持つ「才能」に惹かれているということが大きいのだろう。

 そして最後に明暗を分けたのは料理だった。試食会のメニューには、フランスと日本を結ぶために苦心を重ねてきた相沢のアイデアが反映され、融資が決まった陰には平古の尽力があった。もつれた糸がほどけるように、かつての仲間たちの思いが「この一皿」に凝縮される様子はとてもドラマチックだ。

 それにしても、“視覚で味わう”という表現がこれほど似つかわしいドラマはない。地上波ドラマでの料理や食材の撮られ方はここ10年で格段に進歩しているが、深夜帯の“飯テロ”に慣れた視聴者にも新しい刺激を与えてくれる。ここぞという場面で流れる山下達郎の主題歌「RECIPE(レシピ)」の使い方もとてもぜいたくで心憎い。最高級のフランス料理店を目指す歩みは、伝統枠「日曜劇場」のグレードを押し上げるチャレンジでもある。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『グランメゾン東京』
TBS系にて、10月20日(日)スタート 毎週日曜21:00~21:54
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太(Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、及川光博、 沢村一樹
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子ほか
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/

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