木村拓哉が高倉健の仲間入り? 『グランメゾン東京』は今のキムタクでないと成立しない物語

 日曜劇場(TBS系夜9時放送)の最新作『グランメゾン東京』がはじまった。本作は、型破りのシェフ・尾花夏樹(木村拓哉)が女性シェフの早見倫子(鈴木京香)と共に三ツ星レストランを目指す物語だ。

 主人公の尾花を演じるのはキムタクこと木村拓哉。いまや日本最後の国民的スターと言っても過言ではない木村の出演作は毎回大きく注目されるのだが、第一話を見た印象でいうと、物語が木村の存在感に甘えず、彼をドラマの1パーツとして遠慮なく描いていることに好感を持った。

 つまり、独立したテレビドラマとして、演出と脚本がしっかりしている。中でも『アンナチュラル』(TBS系)等を手掛けた塚原あゆ子の演出が素晴らしく、尾花を取り巻く人々を丁寧に描きながら、調理する場面や料理を、とてもフェティッシュな映像で魅せていた。つまり料理もキムタクもドラマのパーツとして対等な存在として描いているのだ。

 木村に限らず、スター俳優が出演するドラマや映画は、悪い意味での接待感が出てしまい、その俳優の見せ場ばかりをつなぎ合わせた名場面集みたいなものになってしまう。その結果、物語の踏み込みは浅くなり、演出とのバランスが崩れてしまうことが多い。

 『HERO』(フジテレビ系)以降「何をやってもキムタク」と揶揄されることが増えたのは、そのあたりのバランスが悪いものが多かったためだが、近年のキムタク主演映画やドラマは(物語と演出の)バランスが改善されつつあり、キムタクの万能感を下げて、ダメな部分も描くようになってきている。

 これは木村を取り巻く状況が2016年のSMAP解散以降大きく変化しており、その変化を作品の中にフィードバックしているからだろう。

 特に映画はその傾向が強い。死ねない身体でボロボロになりながら戦う剣士・万次を演じた『無限の住人』、自身の正義を貫こうとして一線を超えてしまう検事を演じた『検察側の罪人』。グランドホテルで潜入操作をおこなうために、ホテルマンに扮してお客様のクレーム対応にあたる刑事を演じた『マスカレード・ホテル』の三作は、今のキムタクでないと成立しない物語となっていた。

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