公開から19日間で興収30億突破 『ジョーカー』は一体どこまで伸びる?

『ジョーカー』は一体どこまで伸びる?

 その『ジョーカー』の割りを食ったかたちとなったのは、土日2日間の動員が15万8000人、興収が2億2200万円にとどまり、初登場2位となった『マレフィセント2』だ。これは2014年7月に公開されて、累計興収65.4億円を記録した前作『マレフィセント』の週末初動成績と比べて32.1%という成績。奇しくもこの下降率は、ちょうど同じディズニー作品の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)から『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(2016年)の下降率とほぼ同じ。『アリス・イン・ワンダーランド』の場合は1作目の興行が当時の3D映画ブームによって膨れ上がったという理由があったが、『マレフィセント』の場合は作品自体には理由らしい理由がないのがより深刻だ。海外でも絶好調というわけではないものの、そこまで激しく前作から下降しているわけではないので、やはり本来作品のターゲットとなる大人の女性客の間でも同時期公開の『ジョーカー』に話題が独占されていることが不調の一因となっているのではないだろうか。1人当たりの年間映画鑑賞本数が少ない日本では、このような事態がしばしば起こる。

 また、『ジョーカー』と同日に公開されて初登場4位、次週6位、そして先週末のランキングではトップ10から消えてしまった石川慶監督の『蜜蜂と遠雷』、そして先週末のランキングで10位に初登場した瀬々敬久監督の『楽園』と、充実したキャスト陣も含め、もっと映画ファンの間で話題になっていいはずの実写日本映画の秀作の成績があまり奮っていないのも気になるところだ。なんでもかんでも『ジョーカー』のせいにするわけではないが(しかし話題性という点では確実に「食われた」側面はあるだろう)、例年と比べても興行的にも作品内容的にも低調が続く2019年のメジャー実写日本映画にあって、この2作は自信を持ってオススメできる作品。上映が終わらないうちに、是非劇場に足を運んで欲しい。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『ジョーカー』
全国公開中
監督・製作・共同脚本:トッド・フィリップス
共同脚本:スコット・シルバー
出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & (c)DC Comics”
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/

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