早くも興収20億突破 『ジョーカー』現象、4つの理由

早くも興収20億突破 『ジョーカー』現象、4つの理由

 『ジョーカー』の勢いが止まらない。台風19号が直撃して休館となる映画館も多かった12日(土)を含む先週末も動員21万7000人、興収3億3200万円を記録して2週連続で1位に。10月15日(火)までに早くも興収20億円を突破。過去の日本でのDC作品で最も興収が高かった『ダークナイト ライジング』(2012年)は19.8億円だったので、たった12日間でDC作品の記録を更新したことになる。また、マーベル作品を含むスーパーヒーロー映画全体でも、2週連続で動員1位を記録したのは『アメイジング・スパイダーマン』(2012年)以来のこと。アメリカ国内でも興収2億ドルを突破し、世界興収では6億ドルに到達直前の『ジョーカー』。その大ヒットの理由については既に世界中で様々な角度から語られているが、今回は本作が現象化した理由をいくつか考察していく。

1 現実社会との共時性

 作品の製作や公開のタイミングを読むことはハリウッド映画のようなビッグビジネスにおいて不可欠だが、今回の『ジョーカー』に関しては「格差社会」や「ポピュリズム」といった作り手が作品に込めた現代社会への問いかけ(そこには必ずしも批判的な視点だけでなく、どのようにも解釈可能な偽悪性を帯びた視点も見受けられる)に加えて、公開直前になってさらに熾烈化した香港のデモや、(日本での報道は限定的だったが)インドネシアのデモの映像が、劇中の暴動シーンと酷似していたことを指摘しないわけにはいかない。特に香港のデモでは、公開直後に(『ジョーカー』の劇中でも民衆がつけていた)マスク禁止令が発令されるというあまりにタイムリーな出来事まであった。もちろん、それぞれ政治的背景は異なるものだが、スーパーヒーロー映画としては必ずしもスペクタクル性の高くない『ジョーカー』が、図らずも「マスクをつけて蜂起する民衆」という驚くほど「そのまま」なスペクタクルを作中で表現する作品となったわけだ。ちなみに、当然というべきか、本作の中国本土での公開は見送られている。

2 ネット上でのバズ

 『ジョーカー』が描いている「格差社会」や「ポピュリズム」といったテーマは、ただでさえ論争の絶えない現代的な問題だ。その上で、本作には観客それぞれが「作品の中に何を見たいか」によって受ける印象が異なるような、周到な仕掛けがいくつも張り巡らされている。最も重要なのは、物語の主人公であるジョーカーが「信頼できない語り手」であること。本作では、スクリーンの中で起こっていることのどこまでが(映画の中で)現実か、どこまでが(映画の中で)妄想かが、明確に示されていない。また、特にエンディングのシーンの解釈は意図的に観客の判断に委ねられている。未見の人はそう聞くと、難解な作品と思うかもしれないが、すべてが主人公アーサー(=ジョーカー)視点で語られるので、ストーリーテリング自体は極めてストレート。結果、「多様な解釈ができるのに語り口はシンプル」という非常に巧みな作りになっていて、作品を観た後は誰もがソーシャルメディアを通して何らかの感想を言わずにはいられなくなる。

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