『アス』は地球最大の革命についての映画だ ジョーダン・ピール監督から観客への“死刑宣告”

『アス』は地球最大の革命についての映画だ

 私たちには地球の住人としての責務を果たしていないという反省がある。しかしそれは気分まかせに終始したきれいごとであって、真の反省ではない。私たち人類が地球に対してしていることは、19世紀の産業資本家が労働者階級に対してしていることと同じでしかない(いや、今もだが……)。だから私たち(A, B, C, D……)を打倒して、大陸横断の手と手のリングを結ぼうとするレゾートル(A’, B’, C’, D’……)が一斉蜂起しても文句は言えない。地球の健康のために、私たち(A, B, C, D……)はどうやら滅びなければならないようだ。早く! 早く無能なるお前たちよ、この地球を明け渡せ! 革命の声、声、声が、地下の底から響き始めているのが聞こえはしまいか。もうすぐ私たちは反革命分子として、地球を癌細胞だらけにした重罪人として処刑される運命にある。手遅れの果ての憐れな集団自殺の前に、革命の火の手が上がろうとしているのだ。

 人類文明はナイルとメソポタミア、黄河といった河川のほとりで誕生し、USA(合衆国)のUS(私たちA, B, C, D……)として、ここサンタクルーズの快適な海岸リゾートで滅びる。傑作『ゲット・アウト』(2017)の革命的な黒人映画作家(母は白人)ジョーダン・ピールは、コメディあるいはホラーというコーティングで包み込みながら、遠巻きに私たち観客に死刑宣告を発しようとしているのだ。

■荻野洋一
番組等映像作品の構成・演出業、映画評論家。WOWOW『リーガ・エスパニョーラ』の演出ほか、テレビ番組等を多数手がける。また、雑誌「NOBODY」「boidマガジン」「キネマ旬報」「映画芸術」「エスクァイア」「スタジオボイス」等に映画評論を寄稿。元「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」編集委員。1996年から2014年まで横浜国立大学で「映像論」講義を受け持った。現在、日本映画プロフェッショナル大賞の選考委員もつとめる。
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■公開情報
『アス』
全国公開中
監督・脚本・製作:ジョーダン・ピール
製作:ジェイソン・ブラム
出演:ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー、シャハディ・ライト・ジョセフ、エヴァン・アレックス、カリ・シェルドン、ノエル・シェルドン
ユニバーサル映画
配給:東宝東和
(c)2018 UNIVERSAL STUDIOS (c)Universal Pictures
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