『ノーサイド・ゲーム』ラグビー経験者・福澤克雄の手腕が光る スポーツの試合のような緊迫感

『ノーサイド・ゲーム』大泉洋が仕掛ける先手

 手に汗握る展開の『ノーサイド・ゲーム』だが、試合の緊迫感はドラマの領域を軽く凌駕しており、スポーツの試合を見ている感覚に近い。これは、ラグビー経験者である福澤克雄監督の演出とラグビー経験者をそろえたキャスティングによるものだろう。ボールを前方にパスすることができないラグビーでは、得点を挙げる方法はキックまたはランが基本だが、選手と並走しながら選手の視線で楕円球の行方を追うカメラワークには、ラグビーを知り尽くした監督のこだわりが凝縮されているように感じた。

 また第5話では、元レスリング世界女王の吉田沙保里が大泉洋とレスリング共演を果たしたほか、米津玄師プロデュースの「パプリカ」で知られる子どもユニット「Foorin(フーリン)」も登場。第3話でも現役の力士が出演したが、熱量の高いドラマの雰囲気を中和する貴重な役割を担っている。こうした遊び心のある演出が可能なのも、主線がはっきりした原作に加えて、奇をてらわない、重厚かつ丁寧な演出によって構築された堅牢な物語世界があってこそだ。

 なかばスポーツそのもののような演出がラグビーの魅力をダイレクトに伝え、同時に視聴者はドラマを通して、実在するアストロズというチームを応援しているような感覚に陥る。現実とフィクションが融合したハイブリッドな世界観が今作の特徴と言えるが、仮決めされたルールの中で勝敗を争うスポーツの本質にも通じる。君嶋の知略の奥に隠された制作陣の構想に注目することで、ドラマの味わいが何重にも広がるのではないだろうか。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』
TBS系にて、7月7日(日)スタート 毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:大泉洋、松たか子、高橋光臣、笹本玲奈、天野義久、廣瀬俊朗、齊藤祐也、林家たま平、コージ(ブリリアン)、佳久創、村田琳、笠原ゴーフォワード、大谷亮平、中村芝翫、上川隆也
原作:池井戸潤『ノーサイド』
脚本:丑尾健太郎ほか
演出:福澤克雄ほか
プロデューサー:伊與田英徳ほか
製作著作:TBS
(c)TBS

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