『仮面ライダーゼロワン』から“令和”が始まる! 時代が抱える恐怖と戦ってきた仮面ライダーたち

 そんなゼロワンは、テレビでの放送開始に先駆けて、現在公開中の映画『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』に先行登場を果たしている。

 『Over Quartzer』には、DA PUMPのメンバーが歴史の管理者・クォーツァーとして登場。そのリーダー格であるISSA演じる登場人物は、「平成ライダー20作記念」の看板を背負って戦ってきたジオウを前に、「お前たちの平成って醜くないか?」と、その歴史こそを否定しにかかる。いつしか、平成という元号と切っても切り離せない関係になった仮面ライダー。約20年をかけて膨らみ続けてきた特異なコンテンツの終着点として、ジオウは、そして平成ライダーは、「平成」という時代そのものを全力で肯定していく。その驚きのゴールについては、ぜひ劇場で目撃していただきたい。

 そして、新時代・令和の象徴として群衆の喝采を浴びるゼロワン。早くも、驚きの活躍を銀幕で披露している。

 リアル調のドラマから、海外ドラマを引用した群像劇、ファンタジーにSF、玩具展開との密接なコラボレーションなど、「その時その時」で懸命に発展してきた平成ライダー。その最大の特徴が、「元号」というパブリックな概念を私物化していく様にあった。取り込めるものは全て取り込み、その出来上がりに更に反証を重ねていく。そうして道なき道を切り拓いてきた同シリーズは、「元号」というバトンを、次の仮面ライダーに受け渡していくのだ。

 言うなれば、平成ライダーというシリーズのイズム(主義・流儀)こそが、『ゼロワン』の土台を形成している。同シリーズが「元号」を取り込むことがなければ、このタイミングでの原点回帰や新生は行われなかっただろう。令和の仮面ライダー第1号は、平成ライダー20作が築き上げた流儀の上に、立ち上がるのだ。

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 『ゼロワン』のプロモーション映像のクライマックスでは、ナレーションを務める山寺宏一が、「ゼロワンから、令和元年が始まる!」と高らかに宣言する。いや、とっくに令和は始まっている。もう3ヶ月以上が経過している。しかし、仮面ライダーは、そんなことは物ともしない。彼らが積み上げた流儀こそが、「新元号はまさにここからだ!」と、その胆力を伴う宣言を可能にしているのだ。仮面ライダー以外のどのコンテンツが、こんなことをやってのけるだろうか。

 そんな仮面ライダーたちは、常にその時代が抱える恐怖と戦ってきた。本郷猛が変身する初代『仮面ライダー』が放送されたのは、1971年。その物語には、先の戦争や環境問題の影が見え隠れしていた。

 2000年の『仮面ライダークウガ』では、地下鉄サリン事件のような「どこに誰が潜んでいるか分からない恐怖」、2003年の『仮面ライダーファイズ』では、大企業ぐるみの新しいアプローチの「世界征服」が描写された。2013年の『仮面ライダー鎧武』は、人類には為す術がない大規模な自然災害を。2016年の『仮面ライダーエグゼイド』では、日進月歩で発展し続ける医療現場の最前線を。仮面ライダーは、「その時その時」の日本社会が抱える恐怖や課題と、懸命に取っ組み合ってきたのである。

 そして、2019年の今。人工知能が人間の知性を超え、我々の生活が一変するかもしれない、技術的特異点(シンギュラリティ)が近づいている。「2045年問題」とも言われているが、果たして本当に、コンピュータは人類を超えてしまうのだろうか。

 混沌とした平成を終え、新時代・令和へ。『仮面ライダーゼロワン』は、人工知能(AI)をメインテーマとして扱うことで、この時代こそが持つ課題を洗い出していく。今の我々の目前にある恐怖は、超人的な能力を持った怪人や、古代から蘇った未知の種族ではないのかもしれない。今まさに、この文章を読んでいる貴方の目の前にある、コンピュータ。『ゼロワン』は、そのリスクと可能性に真正面から切り込んでいく。

 現代的な問題に、新しい価値観で。「元号」すらも取り込んで発展してきた仮面ライダーは、その混沌とした流儀の上で、更なる跳躍を見せるだろう。ゼロワンから、令和元年が始まる!

■結騎了
映画・特撮好きのブロガー。『別冊映画秘宝 特撮秘宝』『週刊はてなブログ』等に寄稿。
ブログ:『ジゴワットレポート』Twitter

■放送情報
『仮面ライダーゼロワン』
テレビ朝日系にて9月1日(日)放送スタート。毎週朝9時〜
出演:高橋文哉、岡田龍太郎、鶴嶋乃愛、井桁弘恵、中川大輔、砂川脩弥、児嶋一哉(アンジャッシュ)ほか
原作:石ノ森章太郎
脚本:高橋悠也ほか
音楽:坂部 剛
プロデューサー:井上千尋(テレビ朝日)、水谷圭(テレビ朝日)、大森敬仁(東映)
アクション監督:渡辺淳(ジャパンアクションエンタープライズ)
特撮監督:佛田洋(特撮研究所)
監督:杉原輝昭ほか
企画協力:国立情報学研究所 仮面ライダー協力有志チーム
制作:テレビ朝日、東映、ADK EM
(c)2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/zero-one

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