『ファー・フロム・ホーム』、3日間で10億突破 「スパイダーマンは日本で強い」は本当か?

「スパイダーマンは日本で強い」は本当か?

 まだMCUに加入前のマーク・ウェブ版『アメイジング・スパイダーマン』が公開された2012年になると、その年の日本におけるスーパーヒーロー映画で2位(1位は『アベンジャーズ』、3位は『ダークナイト ライジング』)の興収31.6億円と、その絶対的な強さは、「海外と比べると日本ではまだ強い」という相対的な強さへと変化しつつあった。2014年に公開された『アメイジング・スパイダーマン2』は前作とほぼ同じ31.6億円。そして2017年のMCU加入以降の初めての単独作『ホームカミング』の興収は28億円。MCU人気が日本でも定着し始めていて、作中では大々的にアイアンマン(トニー・スターク)まで登場していたことをふまえると、同作が『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ2作の成績にも及ばなかった時点で「スパイダーマンは日本で強い」という定説は崩れかけていたと言っていいだろう。

 『ファー・フロム・ホーム』の『アメイジング・スパイダーマン2』以来となる世界最速公開というソニー・ピクチャーズの判断は、そんな停滞気味の状況を打破する意味もあったのかもしれない。そして、今作の好スタートの要因は、「スパイダーマンは日本で強い」というこれまでの要因以上に、『エンドゲーム』の大ヒットによって日本でのMCU人気がさらにもう一つ上の段階に入ったことが大きいのではないだろうか。MCUのファン、そしてスパイダーマンのファンとしては、現在のMCUとスパイダーマンの提携関係がこれからも続いていくことを願って止まない。もちろん、ピーター・パーカー役のトム・ホランドも続投で。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
全国公開中
監督:ジョン・ワッツ
脚本:クリス・マッケナ&エリック・ソマーズ
マーベル・コミック・ブック原作:スタン・リー、スティーヴ・ディッコ
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル
出演:トム・ホランド、サミュエル・L・ジャクソン、ゼンデイヤ、コビー・スマルダーズ、ジョン・ファヴロー、J・B・スムーヴ、ジェイコブ・バタロン、マーティン・スター、マリサ・トメイ、ジェイク・ギレンホール
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.spiderman-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/spidermanfilmjp
公式Facebook:https://www.facebook.com/SpiderManJapan/

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