瀬戸康史と高橋克実は“擬似親子”? ネットの悪意に挑む『デジタル・タトゥー』を紐解く

ネットの悪意に挑む『デジタル・タトゥー』

瀬戸康史と高橋克実の疑似親子関係


 アナログ人間の岩井は、とにかく愚直に当事者たちを訪ねて回り、話を聞き、時に叱責する。インターネットのことはまったくわからないし、それに振り回されている人たちのことも理解しているとは言えない。物言いも考え方も雑だが、それでもなんとか当事者たちのそばにいようとする。そうすることで、ネットで匿名のまま悪意を振りまいていた人たちを、顔と名前のある人間に変えていく。

 タイガはそんな岩井のことをどうやら慕っているようだ。けっして居心地が良さそうとは思えない岩井の事務所兼住居にテントを張って同居し、傍若無人で騒ぎばかり起こしていたユーチューバーとは思えないほど、岩井の仕事もかいがいしく手伝っている。

 ふたりを結びつけるキーワードは“親子”だ。

 タイガは父・伊藤秀光と深い確執があった。父は自分にまったく関心を持たず、優しい異母兄・壮輔(竹財輝之助)を自殺に追いやっている。さらに、選挙に邪魔な自分の存在を消そうとしている疑いもある。タイガは父を失った子どもなのだ。

 一人娘の早紀(唐田えりか)を可愛がっている岩井は、娘と同年代のタイガを放っておけない。突き放そうとしたこともあるが、結局、自分の体を張ってタイガを守ろうとした。物分りが悪くて頑固だが温かい心を持つ岩井に、タイガは擬似的な父親の姿を見ているのではないだろうか? そういえば、高橋克実と伊武雅刀はシルエットがよく似ている。

 2話に登場した痴漢冤罪を起こす常習犯、マキ(松林うらら)は両親から見放された子どもだった。3話の加代は、早くに父を亡くしている。親子のつながりを失った人たちが、社会の中で宙ぶらりんになり、問題を起こしていると見ることもできる。

 瀬戸康史と高橋克実の“擬似親子”コンビが、どのようにしてネットにいる人々の心の闇を救っていくか。今後の展開に注目だ。

■大山くまお
ライター・編集。名言、映画、ドラマ、アニメ、音楽などについて取材・執筆を行う。近著に『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』(共著)。文春オンラインにて名言記事を連載中。Twitter

■放送情報
『デジタル・タトゥー』
NHK総合にて毎週(土)21時から21時49分・連続5回
作:浅野妙子
音楽:蓜島邦明
出演:高橋克実、瀬戸康史、唐田えりか、竹財輝之助、今野浩喜、アイクぬわら、飯田基祐、久保田紗友、荒井敦史、近藤公園、中村靖日、中越典子、徳永えり、矢田亜希子、朝加真由美、八嶋智人、伊武雅刀
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/dodra/tatoo/

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