>  > ゾンビドラマが話題に 脚本家・櫻井智也が語る

異色のNHKドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』 櫻井智也の“劇作家”としての脚本作り

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 NHKが本格的なゾンビものをオリジナルで制作し、ドラマファンを驚かせ熱狂させている『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』。最終回を前に、このドラマの脚本を執筆し、そのクオリティの高さで一躍注目を集めた櫻井智也にインタビュー。そこにはドラマの登場人物そのままに葛藤する男がいた! (小田慶子)

「ゾンビも人間に戻るかもしれない」という出発点

――櫻井さんは本作が連続ドラマを単独執筆した初めての作品になりますね。なぜゾンビものを、しかもNHKでやることになったのですか?

櫻井智也(以下、櫻井):僕はMCRという劇団を主宰していて、その公演でもゾンビものをやったことがあります。だから、もともとゾンビという題材は好きなんですが、今回はNHKのプロデューサーさんから「ゾンビものをやりませんか」と声がかかって連続ドラマとして書くことになりました。ゾンビものは完全に浸透していますが、そもそもの設定を作り出したのはジョージ・A・ロメロ監督の映画『ゾンビ』ですよね。その中で主人公たちがヘリコプターで街から脱出する途中、一般の人たちが、ゾンビを銃で撃つのを楽しみながらバーベキューをしているところを見かけるんです。初めて見たときからその場面を「怖いな」と思っていて、このドラマではそういう恐ろしさを炙り出せるかなと思いました。

――人間であったものがゾンビになった瞬間に人間として扱われなくなる。そういう怖さでしょうか?

櫻井:日本では仏壇を置いてお供えをするなど、死んだ人を丁寧に敬うじゃないですか。それに比べると、アメリカのゾンビ映画では途端に尊厳がなくなるというか、死者をすごくぞんざいに扱うなって思ったんです。実は僕の父が2年前に死んで、亡くなるとき、僕が付き合っている彼女と一緒に手を握っていたら、彼女の方だけ強く力を入れてきた。ほぼ意識はないはずなんですが、明らかに僕が握っている手はスッカスカで(笑)、親父はきっと女の子の手をぎゅっと握りたかった。そのとき、「人間、最期まで自我があるんだ」と思いました。そう考えると、ゾンビの扱いも難しくなってきますよね。もし、僕がこのドラマの舞台であるあの町にいたら、「今、起っている現象はゾンビじゃないかも」と思うんじゃないか。もしかしたら“ゆっくりくん”たちはゾンビじゃなくて病気で、後で元の人間に戻るのかもしれない。そのとき「俺、あいつに殴られた」って訴えられたらつまんねえなと理性が働いて、ゾンビでも殴ったりできないだろうと……。これが昭和40年代ぐらいの暴力事件が多かった日本だったら、みんな迷いなく殴っていると思うんですけれど(笑)。

――コンプライアンス意識の浸透した2019年の日本ならではのゾンビものということですね。ゾンビ化するときに体の中からパイナップルの匂いがしたり、ゾンビの攻撃をビニール傘で防いだりという描写も新鮮かつリアルでした。

櫻井:パイナップルを食べたときのイガイガした感じがゾンビっぽいなというのはもともと僕の中の設定としてありました。ゾンビがグリーンの体液を吐くというのも書きました。あとは、現場でディレクターさんたちが意見を出し合いながらみんなでゾンビものを楽しんで作っている感じはありました。スナックのママをあの葛城ユキさんにお願いするというのもプロデューサーのアイデアです。

――キャスティングの際、櫻井さんから「この役をこの人に」というリクエストしましたか?

櫻井:尾崎役の川島潤哉さん、ピザ屋役の阿部亮平さん、広野役の山口祥行さんは、脚本の段階からイメージして書いていたので、お願いしました。尾崎とピザ屋のコンビでは、ゾンビの世界になったから逃げまどう人たちとチャンスだと思う人たちの対比を描きたかったんです。実はそんなにテーマ性は意識していなかったんですが、何かテーマを背負っているとしたら、川島さんが演じた“尾崎乏しい”じゃないかな。そして、神田役の渡辺大知さんと小池役の大東駿介さんは早い段階でゾンビ化してしまったんですが、僕はもうその熱演に感動して、ちゃんとやってくれているんだなぁって感じ入りました(笑)。演劇界の重鎮である岩松了さんがお父さん役をやってくださったのもすごいこと。でも、今回、初めて岩松さんにお会いして、「櫻井くん、劇団をやっているんだって?」と聞かれ、劇団名を言ったらご存知なかったので「これは岸田國士戯曲賞の受賞はないな」と思いました(笑)。岩松さん、選考委員ですから。

――その岩松さん演じる父と原日出子さん演じる母、そして主人公のみずほ(石橋菜津美)と妹という4人家族が群像劇の中心にありますよね。家族へのこだわりはありますか?

櫻井:単純に家族って人生で一番長い時間しゃべっている相手だと思うんです、多くの人にとって。そこに親子というルールがあるから作劇するときに使いやすい。親は子どものことを好きで、でも子どもはそれを感じていなくて、そういう関係性を外すようなことを言わせると面白くなるんですよね。今回、原さんが演じてくださったお父さんのことが大好きなお母さんって、みんな好きじゃないですか。現実にはあまりいないけれど(笑)。単発ドラマ『ただいま母さん』(NHK総合)では南果歩さんに母親役を演じてもらったんですが、たぶん僕はほんわかしたお母さんを出すのが好きなんだと思います。

      

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